母斑(あざ)(10/6/21更新)

あざとは、皮膚の色が周囲と比べて違って見える状態で、その色によって赤あざ、青あざ、茶あざ、黒あざなどと呼ばれます。このなかで皮膚の奇形として生涯のさまざまな時期に発生し、ゆっくり発育して皮膚の色や形の異常を認めるあざを、医学的に母斑と呼びます。

[赤あざ(血管腫)]
局所的な血管の拡張や増殖によって、血液の色が皮膚をすけて赤く見えるあざ
単純性血管腫
血管の発育異常、毛細血管の拡張により生じる、皮膚表面から隆起しない、境界が鮮明な紅斑です。通常は出生時から認められます。発症する部位や合併する症状によってはスタージ・ウェーバー症候群(顔面の三叉(さんさ)神経第1、2枝領域に生じる)、クリッペル・ウェーバー症候群(四肢片側に生じる)という病気のこともあります。自然に消えてなくなることがなく、加齢により色調が濃くなるため、形成外科的治療やレーザー治療などを考慮する必要があります。
サーモンパッチ
上口唇上部、前額中央、眼瞼に生じた境界が不明瞭な単純性血管腫のことです。大部分は1〜3年くらいで自然に消えてなくなるので、治療は不要です。
ウンナ母斑
項部(うなじ)に生じた単純性血管腫のことです。90%くらいはいずれ自然に消えてなくなるといわれています。サーモンパッチと併せて正中部母斑として一括すると、3〜4人に1人くらいの頻度で認められます。
イチゴ状血管腫
未熟な毛細血管が増加、拡張してできあがる鮮紅色の腫瘤(こぶ)です。最初は小さな赤い斑点(毛細血管の拡張)であったものが、生後1〜3カ月にかけて急速に大きくなり、6〜12カ月で最大になります。その後、学齢期にかけて徐々に自然に消えてなくなることが多いといわれています。ただし、機能的に問題が生じるような眼瞼、鼻腔、口唇、口腔、咽頭周囲、肛門周囲などに発症した場合や出血・潰瘍化を繰り返す場合などは、レーザー治療などを行う必要があります。
また、あまりにも巨大な場合(カサバッハ・メリット症候群)や多発する場合には、精密検査や放射線療法、ステロイド療法を必要とすることがあります。
海綿状血管腫
異常な血管が増えて、皮膚の下に塊状になったものです。通常は生まれた時から認められます。皮膚と同じ色から淡い赤紫色または青紫色で、皮膚と同じ高さから半球状に隆起するものまでさまざまです。自然に治ることはなく、形成外科的な対応が必要になります。

[青あざ]
皮膚のやや深い部分(真皮)にメラニン色素を産生する色素細胞が増えるために起こる
蒙古斑
有色人種の小児のおしりの周りに100%認められる青色斑で、ほとんどは自然に消失します。出生時または生後まもなく腰のまわり、下背に出現する円形または卵円形の平らな灰色がかった青色斑。四肢、顔面、腹部に生ずるものを異所性蒙古斑と言います。
生後2才をピークとして次第に自然消失します。異所性蒙古斑は残ることがあります。治療は不要です。
青色母斑
比較的多くみられます。多くは乳幼児期に生ずる直径1cm以下の平らか、少し盛り上がった青色斑は通常型と云い、やや硬く触れる。きわめて稀に大型のものがある(細胞増埴型)。
通常型は良性で変化しません。直径1cm以上の細胞増埴型は悪性化することがあります。
治療は細胞増埴型は深く広範囲に切除することです。
大田母斑
顔面片側上部の眼を中心とする褐青色色素斑。頻度は1万人に1人。女性は男性の5倍多いです。
多くは生まれつき又は生後まもなく、あるいは思春期に通常顔面片側に上下眼瞼、前額部、上顎部、鼻翼、口腔粘膜にかけて淡青色の色素斑が出現し、その上に小さな褐色斑が分布します。2/3に眼球結膜にも色素斑ができるので青く見えます。
自然治癒はありませんが、おおむね良性です。治療はドライアイス療法、レーザー療法。

[黒あざ]
一般に「ほくろ」といわれるもので、メラニンを産生する細胞(母斑細胞)からなる良性腫瘍
黒子(ほくろ)
非常に多い。褐色から黒褐色、エンドウマメ大までの大きさ。平滑で皮膚と同高のもの、半球形に隆起するものもあります。出生時には認められず、3〜4才ごろから発生し、次第に増加してある年令で頂点に達し、その後は減少します。
中等大母斑細胞母斑
皮膚面から多少隆起する黒褐色から黒色の母斑で、直径が1.5cmより大きく大部分は先天性。乳幼児では初めは一様に褐色の斑のように見え、濃褐色の小点がその中に多数あり、小点が次第に発達して一様に黒褐色の斑になる場合が多いです。淡褐色斑の上に黒色点状斑が多く集まる点状集簇性母斑、母斑内に硬毛を生ずる有毛性母斑、上下眼瞼にまたがる分割母斑などがあります。
巨大母斑細胞母斑
躯幹、四肢あるいは顔面の広範囲を占めるもので、出生直後は母斑だけでも2才頃から有毛性となりやすいです。獣皮様母斑、水着様母斑と呼ばれ、比較的小さな母斑を多数伴うことが多いです。すべて先天性であり、悪性黒色腫を生ずる頻度が高いです。
色素性母斑自体は良性ですが、皮膚の悪性腫瘍のなかでも悪性度が高い悪性黒色腫と見分けがつきにくいものも時々あります。とくに日本人で悪性黒色腫の発生が多い手掌(手のひら)、足底(足の裏)に成人以降にできた色素斑に気づいたら、専門医とよく相談してください。

[茶あざ]

そばかす(雀卵斑)
顔面、頚部、腕、手背など露出皮膚部位に多発する淡褐色〜黒褐色の小色素斑で、群生して対称性に分布します。太陽光線、熱により色調は増強され、冬季は薄く、夏季に濃くなります。赤毛を合併することが多いです。大きさは米粒大まで。
5才以上の小児に発症し、思春期に著明となり、中年以降に軽快します。
扁平母斑
頻度は10%。出生時すでに、あるいは出生後早い時期に出現する境界明瞭、淡褐色ないし褐色の偏平で隆起しない茶色の一様の斑点。面上に色の濃い小色素斑が散在することがあります。形状はさまざま。腹部では片側性に出現することが多いです。数は多くとも3〜4個。手掌、足底以外のどの部分にも発生し得ます。大きさは直径数mmから半肢に及ぶ巨大なものまであります。
自然治癒はありません、悪性黒色腫は生じません。直径1.5cm以上の斑が6個以上認められればレックリングハウゼン病(後述)の可能性があります。
治療は特に必要はありませんが、削皮術、レーザー療法、凍結療法、遮蔽クリームなどがあります。再発しやすいです。
ベッカー母斑(遅発性扁平母斑)
思春期前後の男子の前胸部、肩、上背、上腕に片側性に生ずる、有毛性の大型の扁平母斑。母斑の出現初期には有毛性ではなくとも後に発毛してきます。治療に良く反応し、再発することは少ないです。
色素性じんま疹(肥満細胞症)
肥満細胞が増殖する病気のうち皮膚に限局するものを色素性じんま疹、皮膚のみならずリンパ節、骨、肝臓、脾臓、消化管などを侵すものを全身性肥満細胞症といいます。小児には色素性じんま疹が大部分ですので、ここでは色素性じんま疹を説明します。
頻度は300〜2500人に1人。生下時〜6か月までに発生することが多いです。はじめは全身に虫刺され様の紅色丘疹(つぶつぶ)を生じ、やがて直径5cm位までの類円形の褐色斑に変まります。シコリを伴うこともあります。痒みが強く、擦るとじんま疹のように膨れ上がり周囲が赤くなります(ダリエ徴候)。
ふつう10〜15才までに自然消退します。
治療は抗ヒスタミン剤、ステロイド、紫外線療法、ドライアイスや液体窒素療法などがあります。

[フォン・レックリングハウゼン病(神経線維腫症)]

褐色色素斑と神経線維の腫瘍が多発する神経由来の母斑症。
頻度は3000人に1人でかなり多いです。
症状:
a)
皮膚症状:大小の褐色色素斑が乳幼児期から全身に出現します。ミルクコーヒーの色に似ていることからカフェ・オ・レ斑と呼ばれます。小褐色斑はそばかす様ですが、そばかすは乳幼児期には存在せず、5才以降に出現することで区別できます。大褐色斑は指爪大以上の扁平母斑様で、直径1.5cm以上の大褐色斑が6個以上あれば本症が疑わしいです。10才以降に全身皮膚に正常色〜淡紅色で、鶏卵大までの大小不同の皮膚腫瘍(神経線維腫)が出現し、少しずつ増数、増大します。神経線維腫は皮膚表面に近い所に生ずることが多いですが、神経の存在する所ならどこにでも生じます。
b)
骨病変:脊椎側彎、脊椎後彎、下肢彎曲など。
c)
神経病変:聴神経腫瘍による聴力障害、平衡障害、脳腫瘍、けいれん、知能低下。
d)
眼病変:虹彩小結節、視力障害。
e)
内臓病変:褐色細胞腫など。
経過:中枢神経の症状が悪化したり、2〜3%の頻度で腫瘍が悪性化することがあります。
原因:明らかではありません。遺伝はありますが、70%は突然変異。
治療:根本的な治療はありません。

 
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