菌血症・敗血症(10/3/11更新)

[敗血症とは]
肺炎や腎盂腎炎(じんうじんえん)など生体のある部分に感染を起こしている場所から血液中に病原体が流れ込み、重篤な全身症状を引き起こす症候群です。
小児の場合は重症な敗血症に至るまでの全段階=菌血症の状態になっている事が多いです。

[原因]
菌血症は、鼻の奥(鼻咽腔)に住み着いた肺炎球菌、インフルエンザ桿菌などの細菌が何らかの原因で増殖し、血液の中に入り込んで全身に広がろうとする状態のことを言います。乳幼児では細菌に対する抵抗力が弱いために、菌血症が起こりやすいとされています。菌血症の原因の80%は肺炎球菌です。残りの20%はインフルエンザ菌b型(Hib・ヒブ)が原因です。どちらも「のど」に住んでいる普通の細菌です。

[症状]
38℃以上の発熱が見られます。3歳未満の乳幼児でよく見られ、多くは不機嫌になります。診察しても明らかな発熱の原因は認められないことが多く、このような乳幼児の5〜10%で菌血症が見られるとされており、発熱の程度が高いほど菌血症の可能性は高くなります。 鼻汁の見られる児に多いようで、かぜの症状と似ているため注意が必要です。ほうっておくと細菌性髄膜炎や関節炎、皮膚の蜂窩織炎などの重い病気を引き起こし、それぞれけいれん、不機嫌、活気不良(元気がない、ぐったりしている)、皮膚の腫れ、痛み、発赤などが見られ、命に関わることがあります。

[発症頻度]
日本では肺炎球菌の菌血症が毎年2万人ほど発症し、200名ほどが細菌性髄膜炎となっています。Hibの菌血症は3千人ほど発症し、1000名ほどが細菌性髄膜炎となっています。

[治療]
早期に有効な抗菌薬で十分に治療する必要があります。迅速血液検査で疑わしければ、抗菌薬を点滴で投与します。近年は、抗菌薬(抗生物質)の効きにくい耐性菌が増えており、このような耐性菌の場合には特に内服薬(飲み薬)では効果が不十分で、点滴(注射)による治療が必要になります。しばしば入院治療が必要になります。
肺炎球菌による菌血症では内服の抗生物質では重症化を防げませんが、抗生物質を点滴で投与すればほぼ1OO%治すことができます。しかし、Hibによる菌血症では抗生剤の点滴を行っても50%程度が細菌性髄膜炎を発症します。

子どもの発熱は大半がウイルスが原因です。基本的に抗生物質は必要ありません。が、この菌血症のことを考えると、鼻汁のある幼児の高熱の場合は、どうしても抗生物質を処方してしまいます。すぐ風邪をひきやすく、高熱を繰り返すお子さんの場合は処方回数が増えますので、考えて抗生物質の使用は控えたりしますが、そんな時に限って上記の状態になることがあります。上述のように内服では防げないので、結局入院しないといけなくなるのですが!これを防ぐのはやはり、ワクチンでしょうか?中耳炎を繰り返すお子さんも要注意なので、Hibワクチン、プレべナーが普及すれば、小児科、耳鼻科への受診は減るかもしれませんね!どちらも高額なので、一刻も早く定期接種化されることを望みます。

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