B型肝炎持続感染者(キャリア)(10/2/22更新)

[キャリアとは]
成人は免疫機能が確立しているため、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染しても、多くの場合は不顕性感染で自然に治癒します。一部の人では、急性肝炎を発症し、一過性の感染を経て治癒します。どちらの場合も、ウイルスは体から排除されており、HBVに対する免疫を獲得しています(しかし最近の研究で、健康上の問題はないもののごく微量のHBVが肝臓に存在し続けることが明らかになってきました)。しかし、免疫機能が未熟な乳幼児、透析患者、免疫抑制剤を使用している人などがHBVに感染すると、免疫機能がウイルスを異物と認識できないため肝炎を発症しないことがあり、ウイルスが排除されず、ウイルスを体内に保有した状態<持続感染>になります。このように、ウイルスを体内に保有している人を “キャリア”と呼びます。

[経過]
出生時または乳幼児期にHBVに感染してHBVキャリアになると、その多くはある時期まで肝炎を発症せず、健康なまま経過します(無症候性キャリア)。
しかし、ほとんどのHBVキャリアでは、10歳代から30歳代にかけて肝炎を発症します。一般に、この肝炎は軽いものであることが多いために、本人が気付くほどの症状が出ることはほとんどなく、検査によってのみ肝炎であることがわかります。85〜90%の人では、この肝炎は数年のうちに自然に治まってまたもとの健康な状態に戻りますが、ほとんどの人ではウイルスが身体から排除されないままHBVキャリアである状態が続きます(無症候性キャリア)。
HBVキャリアのうち、10〜15%は慢性肝炎を発症し、治療が必要となるとされています。慢性肝炎を発症した場合、放置すると自覚症状がないまま肝硬変へと進展し、肝がんを発症することもあるので注意が必要です。

[感染者数]
1995年から2000年までの6年間に、全国の日赤血液センターにおいて初めて献血した348.6万人について、2000年時点における年齢に換算して集計した年齢別のHBs抗原陽性率をみると、16歳〜19歳で0.23%、20〜29歳で0.52%、30〜39歳で0.84%、40〜49歳で1.19%、50〜59歳で1.50%、60〜69歳で1.27%となっています。
これらの数値と、それぞれの年齢集団ごとの人口をもとに試算すると、2000年の時点におけるわが国の15歳から69歳までの人口9,332.6万人の中に86.6万人〜103.1万人くらいのHBVキャリアの方が、自覚しないままの状態で潜在すると推計されました。
なお、「HBV母子感染防止事業」が全面的に実施に移された1986年以降に生まれた若い世代では、HBVキャリアはきわめて少数(0.04%程度)になっていることがわかっています。

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