急性ウイルス性肝炎(A型肝炎・B型肝炎)(10/2/15更新)

―ウイルス性肝炎とは?―
日本でもっとも多い肝臓病は、肝炎ウイルスによって起こるウイルス性肝炎です。肝炎ウイルスには、A型,B型,C型、D型、E型、非A〜非E型(G型、TT型など)、その他の 7つに 分類されます。ただ、D型、E型は日本ではまれで、問題になるのはほとんどがA型、B型、C型の3種類です。
A型肝炎はウイルスは急性肝炎を引き起こしますが、慢性化することはありません。B型やC型のウイルスに感染した人の中には慢性肝炎に移行する人があり、そして肝硬変、肝臓がんを発症する人もいます。

A型肝炎
[感染経路]
A型肝炎ウイルスにより、引き起こされます。このウイルスは便から排出され、このウイルスで汚染された食べ物を食べることによってうつります。料理人の手から食べ物についたり、自然にA型肝炎ウイルスが集まったカキ(牡蠣)を生で食べたりして、うつることもあります。
[症状]
約1か月くらいの潜伏期間の後に、熱が出たり、黄疸(おうだん)が出て発症します。多くは数週間くらいの入院で後遺症もなく治まります。気がつかない程度に軽いこともありますが、劇症肝炎といって命にかかわることもあります。細胆管性肝炎(さいたんかんせいかんえん)といって、治るのに半年くらいかかる場合もあります。
[予防]
充分に加熱した食べ物からはうつりませんが、ウイルスがついた手で食べ物に触ると、かかる可能性もあります。
日本では15歳以下は未認可のA型肝炎ワクチン(不活化ワクチン)で防ぎます。米国ではA型肝炎ワクチンは定期接種になっていて、全員が受けるのが基本です。接種時期は1歳からで、2回(日本製ワクチンでは3回)接種をします。日本での流行は、以前に比べれば大幅に減っていますが、完全になくすことは不可能です。米国式の接種が理想的と考えられますが、全員接種は欧州でも行われていないので、不必要という考え方もあります。
しかし、欧米豪州など以外の国では、依然として流行がみられるので、海外旅行や移住の時には子どもでも接種が必要になります。その際は、海外渡航に精通した施設で相談してください。

B型肝炎
[感染経路]
B型肝炎を持ったお母さんから分娩の時にうつったり、B型肝炎で汚染された血液の輸血や性行為などで感染することが知られています。しかしこれだけではなく、唾液からうつったり、原因不明のこともよくあります。特に子どもの場合は、原因不明のことも多いとされます。
[症状]
肝炎になると、ふつうは疲れやすくなって、黄疸(おうだん)が出ます。ただしかかっても軽い場合もあります。今までの日本のB型肝炎ウイルスは、子どもの頃にかからない限り慢性化しないとされてきましたが、最近は欧米で流行しているウイルスが持ち込まれており、この場合は、おとなでも慢性化するとされています。肝炎になって重くなると、劇症肝炎になり死亡します。また慢性化すると、肝臓の細胞が大幅に減って働きが悪くなったり(肝硬変)、肝臓ガンが起こります。
[予防]
B型肝炎ワクチン(任意接種、不活化ワクチン)で防ぎます。世界の多くではWHOの指示通りに定期接種になっていて、1回目を生まれて1週間以内に産科施設で接種し、2回目を2-4か月頃、3回目を9-12か月頃に接種します。接種はどの年齢からも開始できますが、できれば生後1-3か月からがおすすめです。また、母親がB型肝炎のキャリアーの場合は、母子感染予防として健康保険で接種できます。
ワクチンの効果は10年前後とされています。自分がかからないようにするという個人防衛の意味では、破傷風のワクチンなどと同じように、10年毎くらいに追加接種した方がよいという考え方もあります。

VPDの中でも、A型肝炎に関しては日本では流行もなく、感染しても重症な症状にはならないので、あまり接種は行われず、もっぱら流行地に赴任する際に接種が要求されることが多いようです。
B型肝炎はキャリアとなり慢性化することを防ぐために行われます。現在は日本ではB型肝炎に感染した母親から生まれたお子さんに関しては、無料で接種できます。これで殆どキャリアになり、慢性化するのは防げています。ただ、アメリカでは大人の肝炎の治療に対して必要な医療費とワクチン接種の費用を考えて、乳児に対する全例接種を行っています。WHOの推奨もあり、子どもに定期接種を行う国は増えています。が、効果はやや弱いようです。

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