子宮頸癌(ヒトパピローマウイルスHPV感染症)(10/1/18更新)

[子宮頸癌とは]
子宮頸部と呼ばれる子宮の出口より発生する癌。子宮癌の多くに該当します。子宮頸癌にかかる女性は毎年約15,000人あり、その中で毎年約3,500人が亡くなる大変重大な病気です。癌というと子宮体癌を含めて主に中高年になってからのことが多いのですが、この子宮頸癌は20代前半からかかり、20代、30代の若い女性が多くかかっているのが現実です。

[原因]
子宮頸癌の原因は、性交時に感染するヒトパピローマウイルスです。中でも16型と18型が主な原因です。初めて性交を経験した年齢が若いほど、またセックスパートナーの数が多いほど、子宮頸癌のリスクが高くなります。性行為開始が低年齢化しておりますので、最近患者さんの数が急増しています。しかしこのウイルスは乳頭腫という、いわゆるイボのウイルスですので、手などの接触を含めて性行為以外でも感染しますので、普通の性行為感染症(STD)とは異なります。このウイルスに感染することは特別なことではなく、極めてありふれたもので、誰もが感染する可能性があります。すべての女性の80%が一生のうちに少なくとも一度は発がん性HPVに感染するといわれています。発がん性HPVに感染しても90%は自然に排除されますが、10%は感染が持続します。持続感染者の1%は数年〜十数年後に子宮頚がんを発症するとされています。

[症状]
このウイルスにかかった方のうち約99%以上の方は知らない間にかかって、知らない間にウイルスが消えて行きます。残りの方にがんが発生しますが、普通はゆっくりと進行します。子宮頸癌は通常、初期の段階では症状がありません。不正出血がみられることがあり、月経期以外の時期に少量または多量の出血がみられたり、性交後に出血したり、月経が通常より重くなる場合があります。子宮頸癌の後期にはこうした不正出血が多くみられます。このほか悪臭のあるおりもの、骨盤部や腰の痛み、脚のむくみなどの症状がみられます。尿路の閉塞を起こすこともあり、治療せずにいると腎不全を起こして死に至ることがあります。子宮がん検診で発見されれば手術になります。進行してくると、大がかりの手術になり、手術後の障害も多いものです。
このようにがんになる可能性は低く、進行は普通はゆっくりですが、それでも残念ながら毎年約3,500人が亡くなっているのが現実です。


日本における20〜29歳女性10万人あたりの各種がんの発症率推移


[診断]
パップスメア検査などの検査を定期的に行うことで、初期の子宮頸癌を発見できます。子宮頸癌は、子宮頸部表面の正常な細胞が徐々に変化することにより発生し、こうした変化を異形成といいます。異形成を起こした細胞は、そのままにしておくとやがて癌になることがあり、中には数年間かかって癌化するものもあります。パップスメア検査では癌だけでなくこうした変化も調べられます。異形成がある場合は3〜4カ月後に再検査を受ける必要があります。
パップスメア検査は、まだ症状がみられないケースも含めて子宮頸癌の90%を正確に検出でき、検査費用も安価です。この検査の導入以降、子宮頸癌による死亡率は50%以上低下しました。このため、性的活動を開始するか18歳になった時点で初回のパップスメア検査を受け、以後は毎年この検査を受けることを多くの医師が勧めています。検査の結果が3年間連続して正常であれば、性生活に変化がない限り2〜3年ごとに検査を受けることにしてもよいでしょう。子宮頸癌あるいは異形成がある人や、過去にあった人は、少なくとも年に1回は検査を受けるようにします。すべての女性がパップスメア検査を定期的に受ければ、この癌による死亡を事実上なくすことも可能だろうといわれています。子宮頸がんは、検診によりがんになる前に発見が可能で、早期発見できれば子宮を失わずに治療することが可能です。将来的には、ワクチン接種と検診により、ほぼ100%の予防が可能となることが期待されています。

[予防]
がんの発生率の高い16型と18型のパピローマウイルスに対するワクチン(サーバリックス:GSK社製)が使用できるようになりました。性行為開始前に接種を始めることが望ましく、日本では普通10歳から、女性にのみ接種します。
接種回数は合計3回(初回、その1か月後、初回から6か月後)で、筋肉注射します。接種により約70%の子宮頸がんを予防できるとされます。2種類の発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV16型、HPV18型)の感染を予防しますが、全ての種類の発がん性HPVの感染を予防できるわけではありません。発がん性HPVに感染するリスクは、性的にアクティブである間は一生存在するため、このワクチンで防げないタイプのウイルスもいますので、必ず子宮頸がん検診を受けることが大切です。検診を受ける率は、欧米では約80%ですが、日本ではなんと20%と大変低いのが問題です。ワクチンを受けた方でも18−20歳過ぎたら総ての女性は子宮がん検診を受けることが大切です。10歳以上で、まだ接種していない女性も是非キャッチアップ(接種漏れ)接種を同じ回数接種してください。日本では子宮がん検診を受ける人が少ないので、45歳までの方に勧められています。
接種料金は1回に付き、1.5万から2万くらいと思われます。

[ワクチン接種後の注意]
副作用としては受けたところの痛み、局所反応くらいです。痛さも他のワクチンと大きく変わらないとされます。接種後に頭痛や胃腸の不調などを訴えるかたもいますが、これらの症状が起こる割合は、いわゆる“ニセ薬(プラセーボ)”を受けたときの差がないことが分かっており、ワクチンの本当の副作用ではないとされます。

copyright(c) 2004 Yamauchi Clinic. all right reseaved.