ワクチンで防げる病気(Vaccine Preventable DiseasesVPD)(09/12/21更新)

[こどものVPD]
結核・ポリオ・ジフテリア・百日咳・破傷風
麻疹・風疹・日本脳炎・みずぼうそう・おたふくかぜ
B型肝炎・A型肝炎
ヒブ感染症(インフルエンザ菌b型感染症) 
小児の肺炎球菌感染症・ロタウイルス胃腸炎  
子宮頸がん(ヒトパピローマウイルス感染症)

昔はみんなが罹り、重い症状のあったものもワクチンのおかげで少なくなった病気から、今でもまだまだ流行している病気、ここではまだ取り上げていない病気などが含まれています。取り上げていない病気についてはおいおい説明いたします。治療法のない思い病気も含まれ、ワクチンをうつことによって防げる病気がある!ということは非常に大切なことで、こういった病気については積極的にワクチンを打つべきであると考えます。誰でも罹る病気なので、罹って免疫をつければ良い、という考え方もありますが、全てのお子さんが軽く済むとは限りません。思い後遺症を残すこともあります。

[日本の現状]
いろんな機会に述べていますが、日本はワクチン後進国です。他の国では当たり前に公費で無料で受けられるワクチンが日本では任意接種で有料、しかも全く受けられないワクチンもまだあります。副作用にたいして異常に過敏になりやすい国民性も影響しているかもわかりません。
とりわけヒブワクチンや小児用肺炎球菌ワクチン(PCV)という、子どもの極めて重い病気である細菌性髄膜炎(さいきんせいずいまくえん)を予防するワクチンが誰でも使えないのは非常に問題です。いくらよいワクチンを作っても皆が受けてくれないことにはワクチンで防げる病気の被害が続くのです。子どもの健康と命を守るためにはワクチンの無料接種が大切です。ヒブワクチンは2008年12月から使用できるようになりましたが、任意接種(費用は自己負担)です。2年後には定期接種化されることが小児決まり、これは一つ安心できます。肺炎球菌ワクチンは、日本ではまだ使用できません。これも来年の春からは一応、私費で接種できるようになりますが。実はヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチンの3種類は、WHOが国の定期接種に入れて、無料で接種して国民を守るように指示しているものです。またWHOでは、おたふくかぜとみずぼうそうも先進国では無料化することが望ましいと勧告しております。これを見てわかるように、日本はとても「先進国」とはいえない状況です。
ワクチン先進国の米国では、きちんとワクチンを接種していないと入園・入学を拒否される場合もあります。集団生活をしたいのであれば、ワクチンを受けておくことは最低限のルールであるということです。このため、海外赴任や留学など、日本人が海外に渡航する時には、これらのワクチンを接種しなければならないことがあります。
多くの先進国では、国が無料で接種を勧奨するワクチン(定期接種)の数は、日本より多いのが普通です。

[同時接種について]
米国では、生後2か月の未熟児でも同じ日に6種類のワクチンを接種します。 たくさんの種類を同時に接種しても、子どもの健康に問題がないことは、今まで多くの米国の子どもが受けてきて、 問題がなかったことからもわかります。同時接種をしないで日本式に毎回1本にすると、最低でも約20週間(約5か月)ほぼ毎週病院にワクチンを受けに行かなくてはなりません。こんなことは不可能ですね。欧州では6種混合ワクチンもあります。同時接種や混合ワクチンを用いた方が、子どもにとっても、接種に付き添う保護者にとっても、負担が軽くてすみます。

[日本の問題点]
ワクチンの接種部位:日本では、法律で皮下接種が決められていますが、他の国では大腿部に筋肉接種するのがふつう。大腿部であれば、赤ちゃんでも片方に3か所くらいは接種できます。  
ワクチンの接種時期と接種間隔:米国では「受けやすい体制をつくって、接種率を上げることが大切」という考え方で、細かなことにはあまりこだわりません。しかし残念ながら、日本ではこの考え方が希薄で、日本では接種にあたって、細かな決まりが多くあります。たとえば平熱が高くても熱が37.5度以上あったり、1日でも接種時期が遅れると国の定期接種として認めないなど、大変やりにくい体制です。その結果として、実際接種率が低く、VPDにかかる人が絶えないのが現状です。
少し専門的になりますが、日本では、不活化ワクチンを接種した場合、次の接種まで中6日以上間隔をあけなければなりません。しかし世界では、不活化ワクチンであれば当日でも翌日でも、期間の制限なく他の種類のワクチンを接種できます。
ワクチンの接種回数:ポリオワクチンの接種回数は、WHOの最低基準で3回とされていますが、日本で定期接種として受けられるのは、2回だけです。日本以外では2回の国はありません。このため、日本では抗体が不充分な人が多いといわれていて、流行国に行く場合は、最低3回、できれば4回接種する必要があります。なお、ポリオワクチンには2種類あり、日本を含むワクチン後進国では生ワクチンで、欧米などの先進国では安全性が高い不活化ワクチン(注射)です。回数の数え方は、どちらを受けても1回と数えます。
ワクチンの安全性の考え方:ワクチンの安全性は、非常に大切な問題です。ワクチンも医薬品ですから、副作用があります。しかしほとんどは重大なものではありません。特に普通のお子さんに重大な副作用が起こることは極めて稀です。接種後にも重い症状(脳炎など)が見られることもありますが、これらはたまたま起こった別の病気によって引き起こされた重い症状(「紛れ込み事故」とも「ニセの副作用」ともいいます)のことがほとんどです。
たとえば現在日本では日本脳炎のワクチンは、接種後にアデム(ADEM)と呼ばれる重い脳炎の人がいたことなどで、接種が実質上見合わせ(正式には積極的勧奨接種の差し控え)になっています。しかし今でも日本脳炎ウイルスを持った蚊は毎夏発生していますし、日本脳炎の患者も出ています。この問題を受けて2006年、WHOでは専門委員会が検討を行いました。その結果、日本脳炎は大変重大な病気で、ワクチン接種が大切であり、ワクチンでアデムになるという日本政府の見解は根拠がないと結論しています。日本の多くの専門家も、ワクチン接種後にアデムがたまたま起こった紛れ込み事故である可能性が高いと考えています。
たとえ極めて稀とはいえ重い副作用がないとは言いませんが、世界ではワクチンを受けることのメリットが、ワクチンを受けないでVPDの被害を受けることのリスクよりも極めて大きいと判断して、ワクチン接種を推進しているのです。
このように、ワクチンの安全性に対する考え方でも、日本と世界の間には大きなギャップがあるといえそうです。

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