上気道咳症候群(08/9/29更新)

[定義]
後鼻漏(鼻汁が喉の奥に流れ落ちること)や、上気道の咳受容体への刺激などが原因で咳が続くもの。この定義に変わってから、アメリカでは長引く急性咳の原因としては一番多いといわれています。

[症状]
ハナ、長引く湿性の咳。後鼻漏症候群での診断基準は次のとおりです。『8週間以上持続する、とくに夜間に多い湿性咳嗽で、プロトンポンプ阻害薬や気管支拡張薬が無効である。』

[診断]
症状、身体所見、X線所見、治療に対する反応などの組み合わせにより行いますが、特異的な診断法はありません (症候群)。後咽頭への後鼻漏、咽頭クリーニング、鼻漏、後咽頭の敷石状変化、治療的診断(第一世代の抗ヒスタミン・充血改善薬)などがあります。

[鑑別診断]
アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎(血管運動性鼻炎、好酸球性非アレルギー性鼻炎NARES)、感染症後鼻炎、細菌性副鼻腔炎、アレルギー性真菌副鼻腔炎、解剖学的異常による鼻炎、刺激物による鼻炎、職業的鼻炎、医原性鼻炎、妊娠鼻炎

[小児の特徴]

[1]

気道の免疫機能がまだ未熟である
[2] 鼻腔や気管支が体格的に狭い
[3] 鼻腔や気管支粘膜の異物排出機構である線毛運動が弱い
[4] 特に2才以下の乳幼児では、自分で鼻をかんだり痰を排出したり出来ず、副鼻腔がまだ成長段階で小さく十分機能しない
[5] 2才から7才頃は、アレルギー素因のある子どもはダニやホコリのアレルギーが目立ち始め、アデノイド、扁桃腺などのリンパ組織が過剰に反応しやすい
こういったところより鼻炎、副鼻腔炎による膿性鼻汁がのどに落ち、鼻閉により本来の鼻の大切な機能である異物のフィルター作用が減弱したり口呼吸が誘発されることにより、直接気管支に刺激が加わりやすくなって咳がでやすくなります。

[治療]
鼻かみ:鼻が通り鼻呼吸が出来る状態が持続すれば、副鼻腔への換気が良くなり、気管支への悪影響が軽減されます。神経質に1日に何回もする必要はありませんが、膿を含んだ鼻汁は適宜かんで下さい。鼻づまり用の点鼻薬や鼻粘膜の炎症を取る点鼻薬で鼻が通った状態にした後で、軽く片方づつかんで下さい。両方の鼻を押さえて強くかみ過ぎると中耳炎などの耳に悪影響を及ぼす恐れもありますので注意して下さい。なお、花粉症で帰宅時や極端な膿性鼻汁が続く場合には生理食塩水による鼻の洗浄も効果的です。
薬剤:抗ヒスタミン剤、去痰剤等。

耳鼻科の先生方は、殆どの咳にハナが落ちて痰になって咳がでる、という言い方をされます。確かに夜眠ってからのみでるひどい咳、という場合にはこのことが当てはまっている、と感じることも多いです。家で、寝る前にハナの吸引ができれば、これで咳が出なくなることがありますので・・・。ただ、全てこの状態が当てはまるわけではありません。湿性の咳が出ている場合は気管支炎があると考えたほうが良い、といわれる小児科の先生もあります。日中起きている時にでる湿性の咳は、ハナが落ちているからとは考えがたいことも多々あります。このあたりは小児科と耳鼻科の考え方の違いですね。副鼻腔炎を治すために、マクロライド系の抗生物質を長期間飲ませられる耳鼻科の先生はありますが、効果のほどははっきり判らないようにも思います。長引く咳は日常本当に多く遭遇しますし、治療に難渋することも多いので、難しい問題ですね。
   
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