[腸管出血性大腸菌とは] 大腸菌は、家畜や人の腸内にも存在します。ほとんどのものは無害ですが、このうちいくつかのものは、人に下痢などの消化器症状や合併症を起こすことがあり、病原大腸菌と呼ばれています。病原大腸菌の中には、毒素を産生し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こす腸管出血性大腸菌と呼ばれるものがあります。腸管出血性大腸菌は、菌の成分(「表面抗原」や「べん毛抗原」などと呼ばれています)によりさらにいくつかに分類されています。代表的なものは「腸管出血性大腸菌O157」で、そのほかに「O26」や「O111」などが知られています。大腸菌は、菌の表面にあるO抗原(細胞壁由来)とH抗原(べん毛由来)により細かく分類されています。「O157」とはO抗原 として157番目に発見されたものを持つという意味です(現在約180に分類されています)。 腸管出血性大腸菌は昭和57年(1982年)アメリカオレゴン州とミシガン州でハンバーガーによる集団食中毒事件があり、患者の糞便からO157が原因菌として見つかったのが最初で、その後アメリカだけでなくアルゼンチン、イギリス、イタリア、インド、オーストラリア、カナダ、スウェーデン、スペイン、チリ、ドイツ、ニュージーランド、フランス、ロシア、中国、南アフリカなど世界各地で見つかっています。 [毒素] 腸管出血性大腸菌は、毒力の強いベロ毒素(志賀毒素群毒素)を出し、溶血性尿毒症症候群(HUS)などの合併症を引き起こすのが特徴です。溶血性尿毒症症候群が発症する機構は十分には解明されていませんが、この毒素が身体の中で様々な障害を起こすことによって、全身性の重篤な症状を出すものと考えられています。 [感染経路] 腸管出血性大腸菌O157の感染事例の原因食品等と特定あるいは推定されたものは、国内では井戸水、牛肉、牛レバー刺し、ハンバーグ、牛角切りステーキ、牛タタキ、ローストビーフ、シカ肉、サラダ、貝割れ大根、キャベツ、メロン、白菜漬け、日本そば、シーフードソースなどです。海外では、ハンバーガー、ローストビーフ、ミートパイ、アルファルファ、レタス、ホウレンソウ、アップルジュースなどです。また、国内で流通している食品の汚染実態を調査したところ、牛肉、内臓肉及び菓子から本菌が見つかったという報告もあります。 [腸管出血性大腸菌による食中毒の発生状況]
本年は既に学校での食中毒による大規模な集団発生が見られているほか、保育施設におけ る集団発生も散見されています。また2006年には、動物とのふれあい体験での感染と推定される事例が報告されており、動物との接触後には充分な手洗いに注意する必要があります。今後も 発生数の多い状況が続くと考えられ、その発生動向には注意が必要です。 食品の取り扱いには十分注意して食中毒の予防を徹底するとともに、手洗いの励行などにより、ヒトからヒトへの二次感染を予防することが大切です。特に、保育施設における集団発生は例年多くみられているので、腸管出血性大腸菌に限らない日ごろからの注意として、特にオムツ交換時の手洗い、園児に対する排便後・食事前の手洗い指導の徹底が重要になります。また、 簡易プールなどの衛生管理にも注意を払う必要があります。 |