日焼け(07/8/6更新)

[紫外線とは]
  太陽光線は、目に見える光「可視光線」の他に、赤外線や紫外線という光を含んでいます。このうち紫外線は、地表に届く光の中で最も波長が短い光線です。。紫外線(Ultraviolet,UV)は生物に与える影響を基に波長の長い方からUVA,UVB,UVCに分けられています。波長が短いほど傷害性が強く,UVCは殺菌灯などに使われていますが,幸い地球を取り巻くオゾン層により吸収され,結局地表に届く紫外線は少量のUVBと大量のUVAです。

[日焼けのメカニズム]
  日本語の「日焼け」という言葉は紫外線により皮膚が赤くなる「サンバーン」と,その後黒くなる「サンタン」を含めて使われていますが,サンバーンは紫外線による皮膚のヤケド,サンタンはその結果おこるメラニン増加です。

[日焼けの症状]
  日焼けは熱傷深度I〜II度の熱傷であり、障害部位において痛痒感、浮腫、赤変、皮膚剥離、発疹といった症状を引き起こし、その他全身症状として吐き気及び発熱と言った症状を呈することもあります。一般に熱傷面積が広いため、熱傷深度の割には症状が重篤なものとなり、極端な日焼けでは、身体は衰弱し、入院を必要とする場合もあります。

 

[日焼けの危険性]
  日焼けは肌の老化を早める元凶といわれます。皮膚の真皮には膠原腺維(コラーゲン)と弾力腺維(エラスチン)が絡み合って、肌の弾力を維持しています。紫外線はこの膠原腺維や弾力腺維、表皮細胞を破壊してしまうため、肌の老化を早めてしまうのです。一度破壊された皮膚細胞の代わりに、新たに生まれる皮膚細胞は、生まれつき紫外線に対して防御体制をかためており、その結果、始めから硬くて厚い皮膚になってしまいます。日焼けの最も恐れるべき危険性は将来の皮膚ガンのリスク増加です。紫外線は細胞のDNAに傷をつけます。細胞にはそれを修復する機能がありますが,長年にわたり繰り返し傷つけられているうちに,傷の直し間違いが起こり突然変異となります。その部分がたまたまガン遺伝子などガンの発生に関わる遺伝子であった場合,その細胞は勝手に増殖してガンになります。DNA損傷をきちんと修復できない先天的異常を持つ色素性乾皮症では,子供のうちから顔などに皮膚ガンが多発します。紫外線によって起こる皮膚ガンはいずれも高齢になってから出てきます。これからの高齢化社会でますますその頻度が高くなることが懸念されます。若いうちから余分な紫外線を浴びない工夫が必要です。

[薬と日光過敏症]
  ある種の抗生物質、避妊薬及び精神安定剤は、服用者を紫外線に対して過敏にし、日焼けのリスクを増大させるものがあります。
 
[上手に日焼けをするために]
太陽光下では最初にサンスクリーン剤(日焼け止め剤)をムラなく肌に塗付し、サンバーン(炎症)を起こすUVBをカットしながら段階的に焼いていきます。海水浴などへ行った初日から長時間、太陽光下で焼くことは非常に危険です。個人差はありますが太陽光線に対しての抵抗力つまり、慣光性を超えて日焼けしてはなりません。
1.午前10時から午後2時までの太陽光線の強い時間帯を避ける。
2.日光浴の時間は一日当たりトータルで3時間を超えない。
3.日焼け直後は肌が乾燥した状態なので、化粧水や乳液などで保湿を行う。これが皮膚を美しく焼く肝心のコツ。
4.赤みを感じる時は冷やしタオルなどでほてりを抑え、消炎ローション(カーマインローションなど)を塗る。
サンスクリーン剤の使い方
サンスクリーン剤をつける第一の目的は強いサンバーンを避けるためです。レジャーで海や山へ行くときには強いものが必要ですが,日常生活で光老化を避けるため位ならさほど強いものは必要ありません。

[日に焼けてしまったら]
日焼け後に皮膚が浮き、めくれてくることがありますが無理には剥がさないようにしましょう。自然に剥がれてきたら美白剤入りの化粧品などを使い、皮膚の手入れを行います。日焼けの後のケアを継続することで、沈着しているメラニン色素は新陳代謝により垢(あか)となって剥がれ落ち、日焼けによるシミやソバカスは徐々に薄くなり、やがて消えることになります。
 
[子どもと日焼け]
  紫外線によるダメージは、年齢を重ねるにつれて大きくなってきます。では、皮膚がいつ頃から老化するのでしょうか?
皮膚の老化は皮脂量の変化によってみることができます。皮膚の表面は、少量の汗と皮膚内部から出た皮脂で「皮脂膜」をつくっており、肌を弱酸性にして細菌から皮膚を守ったり、肌に潤いを与え、わずかですが紫外線を反射させる役割を持っています。この皮脂量が減ってくると、皮脂組織に含まれる水分が蒸発してカサついたり、刺激に対する抵抗力が弱まって肌荒れが起きやすくなります。
  皮脂の分泌量は女性の場合、20代後半からしだいに下がり始め、35歳を境に衰えが目立ってくるようになります。皮脂が十分に分泌され、新陳代謝も活発な肌でしたら、紫外線によって肌がダメージを受けても、すぐに回復することは可能です。子どもたちが夏休みに海やプールで真っ黒に焼いても、秋には白い肌に戻るのは、こういった理由からです。ですから、紫外線によって極端に肌がダメージを受けるような場合を除けば、子どもは日焼けしても大丈夫です。紫外線はいまや悪者扱いされていますが、皮膚表面の殺菌をおこなったり、皮膚内でビタミンDをつくる、カリウムやカルシウムの増加を促進するなど、体によい働きもしているのです。
  ただし必要以上に紫外線を浴びることは、肌へのダメージを大きくするので控えたほうがよいでしょう。
 
  母子手帳から「日光浴」という言葉が消えてから、結構な月日が経ちました。ひと昔前なら真っ黒に日焼けした子供は健康で元気の象徴だと言われていたかもしれませんが、今では逆に皮膚には悪い状態かも?ただ、日常生活の中では、全く完全にガードしすぎてしまうのも問題だと思います。出かける時は帽子をかぶる等の日除け対策をし、上述のような日差しの強い時間帯に長時間日光を浴びることは避け、太陽光線に慣れておくことは必要ですね。日頃全く太陽光線に慣れていない状態で、海辺などの紫外線の強い場所に行ったりすると、紫外線による害は非常に強いものになるでしょう。最近は赤ちゃん用の刺激の少ないタイプの日焼け止めの薬も販売されていますが、使い方には十分気をつけてください。生まれてこの方、一度も自然の太陽光をブロックなしに浴びたことが無い、というような状態は、チョッと生き過ぎですね・・・。

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