ヒトメタニューモウイルス感染症(07/4/23更新)

[原因]
ヒトメタニューモウイルス。2001年にオランダの研究者が小児の急性呼吸器感染症患者の鼻咽頭吸引液から新しいパラミクソウイルスを分離し、ヒトメタニューモウイルス (hMPV)と名付けました。日本でも 2003 年には、ヒトメタニューモウイルスが分離され、その存在が明らかとなりました。今まで原因不明の呼吸器感染症の一部は、ヒトメタニューモウイルスが原因であった可能性があります。

[症状]
RSウイルスによる症状と似ており,軽度の鼻かぜ程度の上気道炎から、細気管支炎、肺炎,クループまでさまざまな気道感染症を起こします。気道感染症で原因ウイルスが特定できなかった例の中の約20%がhMPVに起因していいたという報告があります。季節は冬から春に多く特に1歳未満の小児における気道感染症の重要な原因です。2歳以下の小児、50歳以上の成人、免疫機能の低下した例は気管支炎、肺炎、細気管支炎を発症するリスクが高いと報告されています。hMPV感染症はRSウイルス感染より発熱の頻度が高く、インフルエンザウイルス感染より喘鳴、気管支喘息の悪化の頻度が高いと考えられています。細気管支炎は乳児に多呼吸、陥没呼吸を起こし、重症の場合は入院し呼吸管理が必要な疾患で、75〜85%はRS ウイルスが原因ですが、hMPVとRSウイルスが混合感染を起こすと呼吸管理を必要とする重症な細気管支炎を発症するリスクが10倍高くなると報告されています。日本でhMPV感染に痙攣重積型急性脳症を発症した1例が報告されています。また造血幹細胞移植後の呼吸器感染症に関与しているという報告、hMPVの感染が成人の気管支喘息の悪化に関連しているという報告もありますが、hMPV感染がどのような臨床症状を起こすかはこれからさらに明らかになってくると思われます。血清抗体調査からは50年以上前からヒトの間で流行していたウイルスであり、5〜10歳までにほとんどの小児が感染すると言われています。

[治療]
hMPV 感染症は,上気道感染症から下気道感染症まで起こすため,その重症度にあった対症療法が基本となります。ステロイドは動物実験で hMPV 感染に伴う炎症を抑える作用があることが報告されています。抗ウイルス剤であるリバビリンは試験管内,動物実験ではウイルス増殖抑制作用がありますが,臨床的に使用された報告はありません。

hMPVは呼吸器感染の原因ウイルスとして重要であることがわかってきました。その病態、免疫などまだわかっていないことが多く、今後の検討が必要です。家庭内でhMPVを排泄している小児と接触すると、呼吸器症状により医療機関を受診することがRSウイルスより多いと報告されています。簡単な検査キットが無いのでわかりにくいし、またわかっても特別な治療法は無いのですが、この時期、色々なウイルスが原因になって重症な症状をおこすことがあるので、要注意ですね。

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