ブルセラ症状(07/1/15更新)

繁殖業者の犬で「ブルセラ症」が集団発症 大阪   2007年01月10日朝日新聞
  大阪府和泉市内の繁殖業者が飼育していた犬が、流産や死産を繰り返す「ブルセラ症」に集団感染していたことがわかった。府は11日に実態調査に乗り出す方針。
  府によると、業者は犬約260匹を民家で飼育していた。昨年末、府は「虐待の可能性がある」との通報を受けて立ち入り検査。虐待は確認されなかったが、業者側は19匹がブルセラ症に感染していると申告したという。今年に入って業者は経営難から犬の所有権を放棄し、動物保護団体などが世話を続けている。
  ブルセラ症は日本での報告例こそ少ないが、世界的には家畜を中心に広く知られている。人にも感染し、発熱や疲労などの症状が出るが、犬から人への感染はまれという。

[原因]
ブルセラ症(brucellosis)とは、ブルセラ(Brucella)属の細菌に感染して起こる人獣共通感染症。家畜との接触・汚染乳製品の摂取を通じてヒトに感染します。1887年、イギリス軍の軍医・デビッド・ブルース(Sir David Bruce)によって病原菌が発見されたため、この名前が付きました。

[発生地域]
ブルセラ症は、日本ではほとんどみられなくなった病気ですが、クウェート、イスラエル、サウジアラビア、トルコ等の中近東・地中海地域などをはじめとする世界各地で、依然として流行がみられています。

[主な宿主]
Brucella abortus - ウシ (北米ではバイソンとエルクも) - バング熱とも
B. suis - ブタ - ブタ流産菌病とも
B. melitensis - ヒツジとヤギ - マルタ熱または地中海熱とも
B. ovis - ヒツジ
B. canis - イヌ :Brucella canisがヒトにときとしてイヌから感染することがありますが、イヌが感染してもヒトは感染しないことが多いです。これは、獣医は別として、感染したイヌの感染源となる血液や精液、胎盤などに一般の人々は接触の機会がほとんどないことによるようです。治療によってイヌからBrucella canisを排除することができますが、再び感染してしまうことが多いです。また数週間にわたって感染力がある体液もあります。ガン患者・HIV感染者・臓器移殖患者などで免疫が抑制されている人々は、Brucella canisに感染しているイヌと接触してはいけません。
B. maris - 海洋動物

[人への感染経路]
主な感染経路は、家畜などの動物との接触(わが国の家畜では本症の発生はほとんど見られません)、非加工乳製品の摂取(上記好発地域にて、ヒツジ、ヤギなどの乳製品の摂取)、海外旅行、汚染エアロゾールの吸引、および実験室内での感染事故です。

[症状]
潜伏期間は2〜3週間。人に感染すると発熱、発汗、頭痛、背部痛、体力消耗というような症状を起こします。重症化すれば、脳炎、髄膜炎などの中枢神経の炎症や心内膜炎、骨髄炎を起こす事もあります。

[治療・予防]
治療には抗生物質が使われます。現在、弱毒変異株を用いたワクチンの開発が行われていますが実用化には至っていません。実際的には人のブルセラ症の予防は感染動物の根絶および乳と乳製品の適切な加熱処理、予防接種、および検査陽性動物の殺処分(Test and Slaughter)などを始めとした獣医学的な対策が有効です。これらの方法によって人のブルセラ症の発生が激減した国や地域が多くなっています。日本では根絶した、といわれていましたが!

1954年に、Brucella suisをアメリカ合衆国は生物兵器としましたが、1969年にその保持は中止されました。アメリカ合衆国以外にも,ブルセラ属(genus Brucella)の細菌を生物兵器とした国があると考えられています。バイオテロ(生物兵器を用いたテロ)において,このブルセラ属(genus Brucella)の細菌が噴霧されるなどして生物兵器として使われることが心配されています。

昨年は、狂犬病が36年ぶりにみられて、話題になりました。ブルセラ症は、犬から人に感染する確立は低そうですが、人獣共通感染症で、生物兵器などど物騒なことで問題になりそうです。日本では家畜の間では、絶滅したと考えられていただけに、今後少し心配ですね。

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