感染経路(06/12/18更新)

  一口に感染経路といっても、分類の方法はいくつかあります。人の体の中に入る経路からの分類、感染源からの分類等、単純には分けられないのですが、まず人の体の中に入る経路からの分類で説明します。

1.経気道感染(呼吸器から感染する)
空気感染:患者の咳やくしゃみによって病原体が空気中に散布され、長時間に渡りそのまま浮遊し長い距離を移動して広がり、それを呼吸と共に吸い込む事で感染する。飛沫核感染とも言う。結核・麻疹・水痘がこの感染経路を示す。
飛沫感染:患者の咳やくしゃみによって、唾液や鼻汁に付着した病原体が、唾液・鼻汁が人にかかることによって感染する。通常の風邪ウイルスやインフルエンザなどがこの感染経路を示す。
空気感染と飛沫感染の違いは、飛沫感染では感染者の近くにいる人間が感染する。空気感染は、近くに感染者がいなくても感染し、感染源がわかりにくく、大量の人間が一度に感染する。
2.経口感染(消化器から感染する)
食物感染:食物に含まれる病原体が口から入って感染する。(汚染された便、吐物も含まれる。) 感染性胃腸炎、A型肝炎、ポリオなど
水系感染:飲料水に含まれる病原体が口から入って感染する。同上
3.接触感染(皮膚や粘膜の接触又は血液,体液を介して感染)
接触感染:皮膚、眼等を介して水や土壌などから直接感染するもの。疥癬、水痘などがこれにあたる。
性行為感染症:精液、膣分泌液等を介して性行為を行う事で感染する。エイズ、B型肝炎など。
血液感染:傷口から、また輸血の際に感染する。破傷風、エイズ、B型・C型肝炎など。
4.母児感染(母親から赤ちゃんが感染する)
経胎盤感染:赤ちゃんが体内で母親の子宮・胎盤から栄養を貰っている時に感染する。風疹、エイズ、サイトメガロウイルス、伝染性紅斑など。
経膣感染:赤ちゃんが分娩の際の皮膚の擦り傷から感染する。B型肝炎、エイズ、水痘、B群溶連菌など。
母乳感染:産後の母乳の授乳で感染する。エイズなど。

又、上記の分け方とは別に、病原体を運ぶもの、感染源によってわける方法もあります。
1.空気感染:空気が運ぶ感染。飛沫感染も含まれる。
2.食物・水系感染:上述のとおり
3. ベクター感染:ダニやカ(ベクター)に媒介されて感染する。マラリア、日本脳炎など。
4.動物からの感染:人獣共通感染症。狂犬病、猫ひっかき病など。
5.人:母児感染、上述

  さて、ここまで述べて、今問題のノロウイルスの感染経路についてです。これは経口感染であることには間違いありません。ただし、感染源は食物や水ではありません。カキや二枚貝に含まれ、食中毒として扱われることもありますが、今流行し問題になっているのは、大量のウイルスの含まれる下痢便や吐瀉物が手について、食物に入る。それだけでなく、食器、ドアの取っ手、衣服などからもウイルスが口に入ってしまうこと。さらに、先日東京のホテルで起こったように、廊下でもどした人がいて、吐寫物に含まれたウイルスが広がって、その階にいた人間が多数感染した!これこそ空気感染に他ならないですね。入るのは呼吸器ではなく、消化器ですが!わずか10個のウイルスでも感染が成立し、あの潜伏期間の短さは、ウイルスがどんな恐ろしい勢いで増殖しているのか、想像するだけでも怖いですね!今流行しているノロウイルスはグループU4というタイプのもので、これは特に感染力が強いようです。ただ、本当に体力の落ちている老人の方などが、二次感染をおこして亡くなる例はありますが、基本的には2、3日で治る軽い病気であるのが救いです。嘔吐や下痢が強いとその2日間ほどはチョッとつらいですが・・・。

  インフルエンザウイルスも基本的には飛沫感染ですが、一部空気感染もあるだろうといわれています。今問題になっている鳥インフルエンザは、人間に感染した場合、人から人への感染は殆どありません。これが新型インフルエンザに変わった時には、空気感染も含めた飛沫感染になりますので、やはり恐ろしい勢いで感染が広がっていくのでしょうね・・・。新型が出るだろうといわれだして、もう10年以上になります。今のH5N1が新型に変異するのか、それとも全く別のものなのか・・・、過去のスペイン風邪とは大きく時代が変わり、進歩しています。人間は、ウイルスの変異に勝つことができるのでしょうか??

copyright(c) 2004 Yamauchi Clinic. all right reseaved.