睡眠時無呼吸症候群(05/12/12更新)

  先週扁桃肥大とアデノイドの話をしたときに、この睡眠時無呼吸症候群の言葉がでました。最近はご存知のかたも多いでしょうか?殆ど問題になるのは大人の方ですが、子供の場合も少なくは無いようです。今週はこの話をします。

〔概念〕  睡眠中に呼吸が一時的に止まる病気です。「無呼吸」とは10秒以上の呼吸停止と定義され、この無呼吸が1時間に5回以上、または7時間の睡眠中に30回以上あるときに、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

〔原因〕
閉塞型睡眠時無呼吸:最も一般的なタイプで、のどや上気道がふさがると起こります。中高年の男性の約4〜6%、女性の1〜2%がこの睡眠障害をもっています。閉塞性睡眠時無呼吸はあお向けに寝る肥満の人に最も起こりやすく、これはおそらく肥満と組織の老化などが組み合わさって、上気道が狭くなる結果と思われます。喫煙と過度の飲酒は、閉塞性睡眠時無呼吸を悪化させる原因になります。また(気腫などの)肺の病気があると、すぐに酸素不足になります。のどや上気道の狭さは、家族に共通してみられる傾向があり、睡眠時無呼吸のリスクを増大させます。
中枢性睡眠時無呼吸:まれなタイプで、呼吸を調節している脳領域(脳幹)の機能障害によって発症します。中枢性睡眠時無呼吸は、肥満には関係ありません。
  小児では、殆どの原因が扁桃やアデノイドの肥大によるものです。他に、肥満、あごが小さい、あごが引っ込んでいる(上顎前突)。鼻閉(鼻づまり)、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、大きな舌などです。中枢性として脳性まひなども原因になります。

〔症状〕  閉塞性睡眠時無呼吸の最も一般的な症状はいびきで、ゼイゼイと息苦しそうにしたり、ときどき呼吸が止まったり、突然目を覚ましたりします。閉塞性睡眠時無呼吸が重症になると、睡眠中に上気道がふさがって窒息状態を繰り返すため、日中に居眠りが出るようになります。最終的には、居眠りで日中の仕事に支障が出るようになり、生活の質も落ちてしまいます。記憶力が悪くなったり、性衝動が減少したり、さらには人格まで変わってしまうこともあります。閉塞性睡眠時無呼吸の人は脳卒中、心臓発作、高血圧などのリスクが高くなります。閉塞性睡眠時無呼吸の発作が1時間に20回以上起こる場合は、死亡のリスクが増大します。
小児の場合
〈起きているときの症状〉口呼吸、眠気、いねむり、落ち着きのなさ、集中力の欠如、学習障害、学力低下、指しゃぶり。言語発達不良、眠気を払うための異常行動
〈寝ているときの症状〉いびき、寝ている途中でよく目が覚める、よく動く、汗を多くかく、夜尿、悪夢
〈長期的な影響〉成長障害、精神発達障害、多血症、高血圧、肺高血圧、肺性心

〔治療〕  子供の睡眠時無呼吸症候群の治療法
  アデノイド、口蓋扁桃肥大は、3〜6歳をピークとして自然に症状が改善するケースがみられます。ただし、いびきの程度がひどい場合などは、アデノイド切除や扁桃摘出の対象となります。
  また、カロリー制限や運動療法による体重減少、睡眠時の体位の工夫などによって改善することもあります。

「無呼吸=息が出来ない」ので死んでしまうのではないか?と思われがちですが、実は、この無呼吸自体で、死んでしまうことはありません。むしろ、無呼吸がつづくことで体に負荷がかかり生活習慣病(高血圧や心疾患など)になることや、記憶に新しい新幹線のオーバーラン事件に代表される、昼間の眠気による事故(交通事故、労災事故)に関係するため、本人だけでなく社会的にも問題となるのです。子供の場合は日中の睡眠不足が問題になりますが、長期的には成長障害等にもかかわりますので、のど、鼻に問題がある場合は耳鼻科に相談するのが良いかと思います。

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