クラミジア感染症(05/11/21更新)

 咳の長期間続く症例が多いです。昨年も咳が続くときにいろいろ考える病気のことをお話しましたが、最近注目されているのが、このクラミジアの感染によるものがあります。殆どこの名前を知っている方はいないかもわかりません。今回はこのお話をします。

〔病原体〕  クラミジアは細胞内でのみ増殖する細胞内寄生微生物です。オウム病クラミジア、トラコーマ・クラミジア、肺炎クラミジア、クラミジア・ぺコルムの4種に分類され、前3者がヒトへの病原性が確認されています。オウム病は又別の機会に説明します。トラコーマは目の病気です。この病原菌で新生児、乳児期に肺炎をおこすこともありますが、今回は肺炎クラミジアによる感染症について述べます。

〔疫学〕  肺炎クラミジアによる病気としては急性上気道炎、急性副鼻腔炎、急性気管支炎、また慢性閉塞性肺疾患を主とする慢性呼吸器疾患の感染増悪、および肺炎があります。市中肺炎の約1割に関与しますが、発症年齢は小児のみならず、高齢者にも多いです。他の細菌との重複感染も少なくないです。抗体保有者も何度でも感染し発症し得ます。飛沫感染で伝播し、感染から症状発現までの潜伏期間は3〜4週間と長く、接触が密接な者の間で小規模に緩徐に広がるので、家族内感染や集団内流行がしばしば見られます。

〔症状〕  上気道炎、気管支炎では乾性咳嗽が主体で、咽頭痛、鼻汁、声のかすれ、などもあります。肺炎になると喀痰を伴うこともあります。非常に長く続く激しい咳の症例が比較的多いです。38℃以上の高熱を出す症例はあまり多くありません。小児の場合は比較的軽症の例が多いですが、高齢者や基礎疾患を持つ場合は重症例もみられます。一方で症状の無い無症候性感染も稀ではなく、本来は自然治癒傾向が強いです。

〔治療〕  一般的に上気道炎などでよく使う抗生物質は効果が無く、マクロライド系の抗生物質が効果があります。投与期間は、クラミジアの特殊な増殖様式から、10日から2週間と長めの投与が望ましいです。軽症例に対しては内服で十分です。中等度以上の肺炎では入院のうえ、点滴静注を行います。

  最近、咳が続く患者さんで血液検査を行うと、この肺炎クラミジアの抗体価が上昇している例が、多く見られます。確かに皆、症状はあまり重くありません。マクロライドの抗生物質を使っても、あまり長期間続けないので、治りにくいのかもわかりません。待てば自然治癒するのですが、とにかく結構ひどい咳が続くので患者さんにとっては大変なのですが・・・。原因がはっきりわかれば、安心できるだろうとは思いますね。

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