精神遅滞(05/10/24更新)

  自閉症を述べるときに、高機能=精神遅滞のない自閉症という説明をしていますが、精神遅滞というのはどういう状態かがはっきりとはわからない方もおられるでしょうか?あまり、関係ないな・・・と思われる方も多いかもわかりませんが、少しこのお話をしたいと思います。精神遅滞とは、出生時や乳幼児初期から明らかに知能の働きが標準に達せず、正常な日常生活を送るのに支障がある状態を言います。

〔原因〕  脳の成長と発達が何らかの要因によって傷害される為に起こります。さまざまな医学的要因と環境要因があります。遺伝的なものもあります。受胎前や受胎時に起こるものもあり、妊娠中や出産時、出生後に起こるものもあります。しかし精神遅滞の原因が特定できるものは、軽度の発達遅延の人の約3分の1、中等度から重症の人の約3分の2程度です。

〔症状〕  最初に気付くことが多い徴候は言葉の遅れです。認知障害や言語能力の不足から社会性の発達が遅れることもあります。自分で服を着たり食べるようになる時期が遅れる場合もあります。子供が幼稚園や小学校に行くようになって、年齢相応の活動や学習が出来ないことが判明するまで、わかりにくいこともあります。
日常生活の様々な活動のうち2つ以上に関して対処する能力(適応能力)が限られてしまいます。
日常生活の活動とは
(1)人とコミュニケーションすること
(2)自宅で生活すること
(3)意思決定を含め身の回りのことを自分ですること
(4)余暇活動、社会活動、学校活動、生活活動などへの参加
(5)健康と安全に注意すること、などです。
精神遅滞の診断を下すのが妥当なのは、知能と適応能力の両方が明らかに標準を下回る場合だけです。

〔経過の見通し〕  精神遅滞の障害の程度にはかなりの幅があります。それぞれの人の個性を認めると同時に、知能指数の検査やどの程度の支援を必要とするかに基づいて、軽度か中等度か重度かを判断しておくのは大切なことです。精神遅滞は通常回復するものではありませんが、精神遅滞を引き起こした原因を特定することができれば、子供の今後の変化を予測し、その子供の機能のレベルを向上させる方法を考えることができます。どのような支援が必要かを決めるにあたっては、子供が得意とすること、不得手またはできないことのすべてについて検討する必要があります。その上で多面的な専門家で構成されたチームによるケアを受けるのが最善です。軽度の場合は自立できるだけの社会的能力、職業的能力を習得できますが、社会的又は経済的に過度のストレスを伴う状況下では指導や支援が必要意なるでしょう。


  軽度の精神遅滞の児は、親が気付かないこともあるのですが、この場合に精神遅滞の診断を下す必要があるのだろうか・・・と思ってしまいます。早期に診断ができたからといって、自閉症の場合ほど早く対処すれば良い、という具体的な方法も無く、個性としての対応でいいのかも・・・。学校生活が始まると別な問題になりますが・・・。又、精神の遅れがあるのでは、と不安に思いながら、でも違うかも?(認めたくない?)と思っておられる親御さんもおられます。この場合は逆にはっきり診断を下してしまったほうが、心理的な面も含めて本人にも家族にも支援の方法がいろいろとあるかと思います。ただ私個人の考えとしては、遅れている、できないことがある、ということを重くマイナスに考えずに、まあ少しぐらいいいじゃない、できることも沢山あるよ、と前向きに考えていただけたら!と思います。決して劣っているなどとは思わないで下さい。

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