高機能自閉症・アスペルガー症候群(05/10/11更新

  先週述べた典型的な自閉症のお子さんはあまり多くは見かけません。しかし、この「高機能自閉症」と言われました、というお子さんは本当に多くなっているように感じます。自閉症の最初の報告は1943年でした。が、1960年代後半にやっと自閉症が生まれつきの発達障害であることが明らかになり、90年代に入って自閉症の子供達が生きているかなり特異な体験世界がわかってきたところです。日本では80年代より1歳半健診での早期発見の実施に伴って、2歳代からの早期療育がなされるようになり、大きな効果がもたらされました。その結果高機能といわれる子供の割合が多いことが明らかになってきたようです。

〔定義〕
高機能自閉症:一言で言えば「知能に遅れが無い自閉症」と言う意味です。自閉症の3つの特徴がそろっていて、しかも知能テストの結果がIQ70以上の場合を高機能自閉症と呼びます。でも中にはIQ85以上を目安にしている専門家もいますし、「遅れがない」の基準は不統一です。「高機能」という言葉のイメージで、社会への適応状態がいいとか、自閉症の症状が軽い、という意味に受け取ってしまいがちですが、定義はあくまでも知能に関するもので、自閉症の症状が強いか軽いかは関係ありません。
アスペルガー症候群:知的発達の遅れを伴わず、かつ、自閉症の特徴のうち言葉の発達の遅れを伴わないもの、とされています。しかし、言葉はあってもコミュニケーションの手段として使えていません。アメリカ精神医学会では2歳までにことばがでて、3歳までに二語文を話していることが必須条件になっていますが、実際のところは2歳半まで話さなくても、5歳くらいで普通にしゃべっている子はたくさんいます。そういう子供に自閉症の3つの特徴があればアスペルガー症候群と診断しても良いと思います。
他にも自閉症スペクトラム、広汎性発達障害などと、いろいろな呼び名もありますが、最近は高機能自閉症かアスペルガー症候群かは厳密には分ける必要は無く、一括して同義とみなすのが実際的ではないかと思われます。

[診断はいつからできるか?〕  自閉症の確定診断は3つの症状が生涯にわたって続くことがわかった段階でなされますが、その見通しがつくのはたいてい3歳過ぎです。しかし現在では1歳半健診の時に、言葉の遅れのある子供に対して3つの症状があれば、高機能自閉症の可能性があると診断されているようです。その前提で子供への援助や教育の方針を立てるのは、意味のあることです。将来的に自閉症ではないかと言う不安は、杞憂に終わるかもしれない。でも今の子供の状態にあったプランをたてて生活を工夫して行く事は、決して無駄ではないでしょう。本当に問題になるのは集団生活を始めてから、学習が始まってからではありますが・・・。

〔経過の見通し〕  幼児期に最もよくその特徴が現れ、以後次第にその症状はうすれていくようです。早期からの療育によって(その特異性は残るものの)社会に妥当な範囲に、行動や興味を統制していくことは可能かもしれません。そのユニークさが個性として認められる状況下にあっては、良好な人間関係を維持する事はできるでしょう。


自閉症の人は以前は1万人に5人の稀な障害と言われていました。しかし、高機能自閉症・アスペルガー症候群などは1.2%、100人に1人の割合で見られます。最近は自分がそうである・・・と感じている大人の方も増えてきているようです。大切なのは、”普通”だと思い込もう、思い込ませようとするのではなく、子供の能力を発揮させる為の援助をしていくということだと思います。

copyright(c) 2004 Yamauchi Clinic. all right reseaved.