自閉症(05/10/3更新

  最近は自閉症という言葉もよく聞かれるようになりました。症状にも差があり、現在は自閉症類似の病態を総称して広汎性発達障害と言われています。自閉性=社会性の生来の障害の存在です。今週はこのお話をします。
  自閉症とは、幼い子供が正常な社会的関係を発達させることができず、異常な言葉を使ったり、又は全く話さず、強迫観念に取り付かれたような儀式的な行動をし、正常に知能が発達しないことがあります。1万人に5人の割合で発症します。自閉症の症状は2歳までに現れることが多く、3歳までには必ず現れます。この病気は女子よりも男子に2〜4倍多く見られます。自閉症の子供には精神遅滞を伴う場合も少なくありませんが、精神遅滞と自閉症は全く別のものです。

〔原因〕  はっきりした原因は完全には解明されていませんが、生物学的な要因で起きる病気であることは明らかです。つまり生まれつきの脳障害で、中枢神経機能に障害があり、ある種の染色体異常や出生前の感染なども原因となるようです。

〔症状〕  次の3点を主な特徴とする行動的症候群です。
1.社会性の発達の障害(対人関係における障害)
乳幼児期はおとなしい、手がかからないと感じられ、親への愛着が乏しく、抱いても喜ばない、視線を合わせない、呼んでも振り向かないといった特徴があります。年長児では他の人と関わらない(関わられない)、周りの世界に無関心、協調・共感ができない、視線をそらし顔の表情に乏しく、人の表情や感情を読み取るのが苦手です。
2.コミュニケーション障害(言語の発達障害)
自閉症の子供の約半数は話せるようになりません。話せるようになる子供でも、話し出すのは普通の子供より遅く、言葉の使い方に異常が見られます。オウム返し、人称代名詞の逆転(自分のことを「あなた、きみ」という)、その場にそぐわない言葉、抑揚がなく気持ちのこもらない話し方、又異常な韻や音程をつけて話すことがよくあります。
3.想像力の障害とそれに基づく行動の障害(反復的で常同的な言語・行動。こだわり)
自閉症の子供は変化を非常に嫌い道順、手順、日課などの変更、変化に抵抗します。新しい食物やおもちゃ、新しい衣服などを嫌がります。また特定の物に異常なほど執着を示すことがよくあります。体を前後に揺すったり、手をひらひら・パタパタさせる、全く同じやり方で繰り返し物を回転させるなどの行動がみられます。人が何を考えているかの推測不能でごっこ遊びや物まね遊びができません。
その他の特徴
  ●特定の音に耳をふさぐ、痛みに鈍感
  ●時刻表やカレンダーなど機械的記憶が得意
  ●出来る事と出来ない事の差が激しい
  ●自傷、他害
  ●奇声、パニック
症状は軽度から重度まで幅がありますが、これらの症状がある為に学校や社会で自主的に行動することができません。自閉症の子供の約70%に、ある程度の精神遅滞がみられます(IQが70未満)。言語能力よりも運動能力や空間感覚が優れています。自閉症の子供の中には予想できない特殊能力があり、複雑な暗算や卓越した音楽の才能のある子供もいます。残念ながらこのような子供の多くは、その才能を社会生活で生かすことができません。

〔経過の見通しと治療〕  自閉症の症状は生涯続きます。経過の見通しは、子供が7歳までにどの程度使いものになる言語を習得できるかによって大きく左右されます。標準以下の知能、例えば標準的IQ検査で50未満のスコアの自閉症児は、成人後も施設で完全なケアを受けることが多くなります。IQが正常な子供の場合は、人間関係を築けるようにすることを目的とした心理療法が有効な場合があります。言葉の指示が入りにくいので、絵カードを使った視覚による指示が非常に効果があります。
  薬物療法では自閉症そのものを治すことはできません。しかし、自傷行為の激しい場合や、儀式的行動を軽減する為に薬物を使うこともあります。
  知的障害を伴い殆ど言葉を話せないタイプの自閉症(低機能自閉症)はあまり多くはありません。症状として現れてくる行動も様々です。一昔前と違って、自閉症の認知障害の中身がはっきりわかるようになり、自閉症児に対して特別な教育プログラムも組めるようになってきています。治療をすることはできなくても、行動の特徴を理解して、苦手なことを押し付けず、周りにいる人間が十分対応していくことが大切ですね。
  自閉症のことをとても正確にわかりやすく描いているお勧めの本があります。漫画です。「光とともに」昨年これはテレビ化されましたが、なんだか違う中身に変わってるな!という印象でした。

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