学習障害というと、日本語の障害という言葉のイメージが重過ぎるので、最近は「LD」という言葉を使うほうが多くなってきています。先週お話しましたADHDと混同されていましたが、現在では別のものと考えられています。しかしLDとADHDを合併する割合は高いとも言われています。どちらかというと教育的概念用語として定着してきつつあるようです。今週はこのお話をします。 〔定義〕 1997年7月に文部省・協力者会議にて示された公式の定義があります。 学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態をさすものである。 学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。 〔症状〕 一斉授業や集団行動をする時に、以下のような困難があります。 (1)言語能力の困難:相手にわかるように話すことができない。 (2)読字・書字の困難:黒板の字を時間内に写せない。漢字を覚えるのが苦手。誤字・脱字が多い。 (3)算数・計算の困難:計算が遅い、お金の見当がつけにくい。 (4)推論の困難:想像して考えることができにくい。 学習面だけでなく、毎日の生活の中でも困難を感じることが沢山あります。 (1)社会性の困難:表情の変化に気付けず、相手の感情を逆なでしてしまう。 (2)運動の困難:運動が苦手。 (3)不注意・多動による困難:集中力に乏しく、疲れやすい傾向にある。 〔対応〕 LDは中枢神経に何らかの機能障害があると推定されていますが、現在の医学でははっきりと解明できておらず、また一部の症状を除いて有効な医学的療法はありません。LDは症候群であり、個々のLD児・者たちが抱える困難は多様です。LDの診断は確定する必要はないかもしれません。それぞれの状態(症状)への教育的な対応が大切です。学習障害という病名よりも、現実に子供がどのような状態で、何に困っているかをしっかり把握する必要があります。周りの子供たちに対しても具体的な接し方を、説明してあげて下さい。 LDは先に述べたように、教育的概念用語として認識されるようになってきていますが、決して学齢期だけの問題ではありません。周囲から理解されにくい言動をとるばあいがあり、一生涯何らかの困難を伴うものとされています。大人になっていくLD児をどのように援助するかが今後の課題ですね。
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