起立性調節障害(Orthostatic Disregulation,OD)(05/8/29更新

  この病名はお聞きになったことがあるでしょうか?略してODと言うことが多いです。これは自律神経失調症のひとつで、寝ている状態から起き上がった時に血管の調節がうまくいかず、症状が出るものをいいます。ODの子供は、朝起きが悪く、なかなか起きられません。一日中ごろごろして、夕方になって元気になり、逆に夜には寝付けず、また朝起きられない、の悪循環で学校を欠席したり引きこもりがちになるので、最近注目されています。

[症状]  脱力感や肩こり、めまい、腹痛、頭痛といった典型的な症状は小学校高学年から思春期によくみられますが、それ以前の年齢でも違った症状が現れたりします。
2〜3歳頃から:乗り物に酔いやすい。すぐに疲れておんぶや抱っこを求める。軽い腹痛を繰り返す。寝起きに顔色や唇の色が悪い。
5〜6歳頃から:入浴時に気分が悪くなる。少し動くと動悸や息切れを起こしやすい。朝なかなか起きられない。朝礼などで長時間立っていると脳貧血状態になり倒れやすい。急に立ち上がると真っ青になって、立ちくらみを起こす。すぐに疲れる。
10歳頃から:胸の痛みを訴える。肩こりや体のあちこちの不調を訴える。急に激しい運動をすると気分が悪くなり倒れる。

[原因]  成長期の子供に多く起こる病気の一つで、血液の循環を調節する自律神経の失調による低血圧が原因です。急に立ち上がったり、長い時間直立不動で立っていますと、体の中の血液は重力で足のほうに落ちようとしますが、自律神経が働いて下半身の血液を収縮させてそれを防ごうとします。しかし、この調節がうまくできないと、血液が下半身にたまり、逆に脳が貧血状態になります。この脳貧血の症状が、ODの症状になります。
子供の5〜10%にみられ、女の子の比率がやや高くなっています。季節の変わり目に症状が出ることが多く、なかでも春から初夏にかけて最も多く見られ、症状が悪化する割合も高くなります。高校生になると男子の約75%は症状が現れなくなりますが、女子の場合は約40%に留まり大人になっても続くことがあります。家族の中に同じような症状をもつ人が約80%いることが分かっています。ODを起こす体質は遺伝するものではないかともいわれています。  

[診断]  厳密に診断するのは難しいのですが、一応診断基準があり、これに照らし合わせて考えます。以下にあげる大症状を3つ、あるいは大症状を2つと小症状を1つ以上、あるいは大症状を1つと小症状を3つ以上があると診断できます。
<大症状>
  (1)たちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい。
  (2)立っていると気持ちが悪くなり、ひどくなると倒れる。
  (3)入浴時あるいはいやなことを見聞きすると気持ちが悪くなる。
  (4)少し動くと動悸あるいは息切れがする。
  (5)朝起きが不良で、午前中調子が悪い。
<小症状>
  (1)顔色不良
  (2)食欲不振
  (3)へその周りの強い腹痛
  (4)疲れやすい
  (5)繰り返す頭痛
  (6)乗り物酔いしやすい
<起立試験>
  安静に横になっていた場合とその後急に立った場合で血圧や脈拍の変化を見る方法もあります。この結果も小症状に含まれます。
<鑑別診断>
  貧血や心疾患、結核などの他、慢性副鼻腔炎といった慢性感染症、てんかんなどがないかどうか。必要に応じて一連の検査で他の病気でないことを確認の上、最終的にODとの診断が下せます。

[治療]  最も大切な事は、体を鍛えて、規則正しい生活をするように心がけることです。夜更かしはせず、十分な睡眠をとり、食事は三度、決められた時間に食べます。風邪をひいたり疲れているときに起こりやすいので、体調を整えることです。症状が強いときは、薬(血圧を上げる薬を朝目が覚めたらすぐに飲む、その他それぞれの症状にあわせた薬)を出します。しかし、いつまでも薬に頼らず、生活を整えることで自信がついたら中止していきます。
ODの子供は、午前中に体調が悪い為、授業がよく理解できないことがあります。そのために学校がきらいになったり、不登校のきっかけになることもあります。大切なことは、病気の原因をよく理解して、子供に症状を改善しようとする気持ちをもたせ、家族が協力して改善を図っていくことです。

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