昨年夏にアメリカから帰国した女性がこの西ナイル熱の疑いあり、ということで世間を賑わしたので、この病名をご存知の方もおられるでしょうか?この病気は非常に日本脳炎と似ています。世界的な分布地域と、中間宿主が日本脳炎とは少し違います。今週はこのお話をします。 [原因] ウエストナイルウイルス。日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルスの仲間です。1937年にアフリカのウガンダの西ナイル地方の女性発熱患者の血液から初めて分離された為、この名が付けられました。アフリカ、東欧、西アジア、中東などに分布しています。1999年にニューヨークを中心に西ナイルウイルス感染の多発が見られるまで、アメリカ大陸での報告はありませんでした。これは感染している蚊あるいは動物が飛行機でニューヨークに渡ってきて広がっていったのではないかと言われています。 [感染経路] 西ナイルウイルスに感染した蚊が、人の血を吸うことによって、血を吸われた人が西ナイルウイルスに感染します。人から人へは感染しません。感染する動物は鳥や馬、鳥と蚊の間で感染環が維持されます。アメリカカラスはこのウイルスに感染すると致死率が高く、アメリカ合衆国では、西ナイルウイルスの蔓延状況を知る為、死亡したカラスの調査も行われています。発症時期は蚊の活動時期と一致し、4〜10月、特に7〜9月がピークとなります。 [症状] 潜伏期間は3〜15日。感染例の約80%は不顕性感染(感染しても症状が出ない)で終わります。症状は、発熱、頭痛、背部痛、筋肉痛、筋力低下、食欲不振、発疹、リンパ節腫脹などで、発症した場合の多くは短期間(約1週間)で回復します。感染者の1%未満に髄膜炎・脳炎症状が見られ、致死率は重症患者の3〜5%(主に高齢者)とされています。 [治療] 特異的な抗ウイルス治療薬は無く、対症療法を行うことになります。 [予防] ワクチンの研究は進んでおり、アメリカよりも日本の長崎大学の研究グループの方が、新しい日本脳炎ワクチンの製造技術を応用し、安全性も高く、実用化に最も近いと、期待されています。又、日本脳炎ウイルスとの交叉反応があるため、動物実験では、日本脳炎ワクチンが西ナイルウイルス感染を防ぐ可能性を示唆する報告もみられています。 ![]()
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