急性散在性脳脊髄炎(ADEM)(05/6/13更新

  先週日本脳炎予防接種の副反応として報告された急性散在性脳脊髄炎の話をします。

[概念]  各種のウイルス感染、あるいはワクチン接種後に脳および脊髄に急激な静脈周囲性の脱髄と炎症を生じる病態です。複数の病巣による神経症候を急性にきたす脱髄性脳脊髄炎です。

[原因]  ウイルス感染(麻疹、水痘が多いですが、原因ウイルスがわからないことが殆どです)に続発しますが、病巣にウイルスは検出されず、おそらくウイルス感染によって惹起された自己免疫反応で あると考えられています。

[症状]  感染後4〜21日目(予防接種後は2週目くらいまで)に、頭痛、発熱、悪心、嘔吐、意識障害、精神症状、痙攣などの脳炎症状を主体とする場合と、対麻痺(両下肢麻痺)、分節性感覚障害、排尿障害などの脊髄症状を主体とする場合があり、また末梢神経障害を呈する場合もあります。

[治療]  副腎皮質ステロイドが用いられます。

[予後]  比較的良いですが、神経後遺症が10%程度あります。


  この病気はあまり多くはありませんね。説明のように勿論、予防接種だけが原因で起こるのではありませんので、今まで経験した患者さんは、予防接種が原因ではなく、病名の分かるウイルス感染でもなく、いわゆるかぜのような発熱の後に起こったものでした。原因になる予防接種では、日本脳炎が一番多く、次いでインフルエンザとなっていますが、厚生労働省は日本脳炎ワクチン接種後のADEMの発生率が他のワクチンに比べて特に高いので、マウスの脳乳剤から作られているためではないかと疑い、メーカーに対し細胞培養を用いる製造方法に変更を求める方針で、専門家の意見を聞くとのことです。細胞培養ワクチンの開発はかなり進んでいるようですが、実用になるまでまだ少し時間はかかりそうです。
 
copyright(c) 2004 Yamauchi Clinic. all right reseaved.