日本脳炎予防接種の取り扱いについて(05/6/6更新

  今般,厚生労働省がマウスの脳を用いた現在の日本脳炎ワクチンとそれを接種した後の重症ADEM(急性散在性脳脊髄炎)発生との因果関係があるとの判断が下されたことから,現時点ではより慎重を期するため,定期予防接種として現行の日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨は行わないよう,各市町村に対し勧告を行ったものです。これは昨年7月に日本脳炎ワクチン接種後に急性散在性脳脊髄炎(ADEM)を発症した症例が厳格な科学的証明は無いが、ワクチンとの因果関係が否定できない、として認定されたことによります。

当院での対応
  現行の日本脳炎ワクチン接種については,積極的な勧奨を行わないこととしました。
  特に接種を希望される方については,説明・同意を得た上で公費により接種することは可能です。ご相談下さい。(同意書の提出が必要)
  よりリスクの低い組織培養法によるワクチンが現在開発中であることから、供給できる体制ができたときに供給に応じ、接種勧奨を再開する予定です。
  日本脳炎は,蚊によって感染しますので,蚊に刺されないよう服装などに気をつけましょう。

参照して下さい
   厚生労働省:日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨差し控えQ&A
   http://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/nouen/index.html

[日本脳炎の患者発生状況]
  日本脳炎患者数は1950年代には小児を中心に年間数千人でした。1966年には55歳以上の高年齢層をピークに 2,000人を超える患者がみられました。1967〜76年に特別対策として小児のみならず高齢者を含む成人に積極的にワクチン接種が行われた結果、 患者は急速に減少し、 1980年代は年間数十人、 1992年以降は一桁の報告となりました。1992年以降1998年までは年間4人を超えませんでした。
  1999〜2002年の4年間に日本脳炎患者は、 合計25例報告されています。年間5〜8人と微増傾向にあります。患者の発症日は、 7月12日(2001年愛媛県)が最も早く、 11月1日(2002年大阪府)が最も遅いです。地域別にみると、 すべての患者が中部以西で発生しており、 九州8例、 四国5例、 中国9例、 近畿2例、 北陸1例でした。県別では、 広島県および高知県で各3名が報告されています。特に2002年には、 中国地方で計6例(広島県3例、 鳥取県1例、 岡山県1例、 島根県1例)の患者発生が確認されています。患者は男性12例、 女性13例と男女ほぼ同数で、 年齢は、 55歳以上が80%(20例)を占め、 10代2例、 30代1例、 40代2例でした。 近年の傾向である老人における発生だけでなく、 小児や壮年期の患者が発生していることと、 和歌山県では11年ぶり、 広島県では12年ぶり、 石川県でも17年ぶりと、 最近患者発生がなかった地域での発生がみられています。患者発生がない地域でも、 抗体陽性ブタが観察されていることから、 日本脳炎感染蚊は、 毎夏北海道を除く日本各地に存在すると推察されます。したがって、 夏季に原因不明の脳炎・脳症が発生した場合には、 日本脳炎は過去の疾患と考えず鑑別診断の項目に加える必要があります。さらに日本脳炎と近縁のウエストナイルウイルス(WNV)の感染も考慮に入れる必要があります。ちなみに2002年以降、 日本脳炎と報告された患者7例について国立感染症研究所ウイルス第一部でWNVの病原体・血清診断も行いましたが、 結果はいずれも陰性でした。

[日本脳炎の副反応]
  ADEMについては次週に詳しく述べます。
  予防接種後にADEMがみられたとして、因果関係は明らかでないまま予防接種副反応報告に報告された例は1995年度以降21件みられます。因果関係が否定できない又は肯定できるとして認定を受けた人の数は、1991年度から、今回の事例が5月に認知された結果14例になりました。 重症例がこの事例により5例目となります。発生頻度は約200万回の接種に1回程度、きわめてまれに発生すると考えられています。万が一発症しても通常は軽快しその後の再発はみられません。通常ワクチン接種後数日から2週間程度の間に発熱などの症状から、けいれん、運動障害等の症状があらわれます。
  ADEM以外の副反応は、まれに過敏症(これはすべてのワクチンにあてはまりますが)。発熱、頭痛、倦怠感、吐き気、接種部位の初赤、腫れ、痛みなどが認められることがありますが、普通は2〜3日以内に治ります。

  5月30日、読売新聞の朝刊の1面トップニュースとして、日本脳炎ワクチン接種中止が報じられ、私たちも寝耳に水!え?何、それ?何時決まったのか、現場の人間に対して何の連絡も無い!と随分当惑しました。結局読売新聞だけがスクープ扱いしたようなのですが、こんな事をこういう形で報じられても混乱を招くだけでしたね・・・。厚労省は30日に発表する予定だったようで、朝の段階ではまだホームページには何も書かれていませんでした。その後各区の医師会から日本脳炎ワクチン接種は事実上中止とのFAXが流れ、京都市から郵送で通知が来たのはその2日後でした。中止という表現はされていませんね。「積極的勧奨の差し控え」というものです。ワクチンの定期接種が義務でなくなってから、予防接種は奨励接種になっています。それを今は積極的には勧めない・・・ということで、中止とは少しニュアンスが違うようですが・・・。

  新しいワクチンは来春には出来る・・・という噂!もあります。今から接種を予定されていた方は、とにかく接種は待って下さい。問題は、初回の1回のみ接種をした方達ですね。1回目の接種は体に日本脳炎のウイルスを記憶させる為のものです。新しいワクチンが何時できるのかが、はっきりしないので、間がどのくらい空いてしまうのかが分かりません。接種したことは記憶はされるので0にはなりませんが、空く期間にもよりますね。どうしたら良いのか分からない方はご相談ください。
 
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