(ぎょう)虫症(05/5/30更新

  昔はいろんな種類の寄生虫の病気がありました。以前の寄生虫症の代表は回虫症でしたが、衛生状態の改善と人尿糞を肥料として使わなくなってからは回虫症は激減しました。代わって保育所、幼稚園、小学校など集団生活の中でモットの多い寄生虫症はぎょう虫症です。5〜20%の感染率で、意外と保有率は高く、まだ絶滅とはいきません。5歳を中心に高い感染のピークがみられ、30〜40歳代にもう1つのピークがみられ、これは子供の親の年齢にあたり、家族内感染があることを示しています。今回はこのぎょう虫症のお話をします。

[特徴]  体長約2cmほどの小さな白い糸のような虫です。盲腸に寄生し、成熟したメス成虫は夜間、肛門周囲に6000〜10000個の虫卵を産卵します。産卵後メス成虫は死にますが、産卵された卵は6〜7時間で感染可能な成熟卵となり、衣類やベッドや他の物に付着して、約2週間生存します。この間に人に経口摂取されると十二指腸で孵化し、盲腸で成虫となります。

[症状]  肛門周囲の痒み。痒みによる不眠、集中力の低下、情緒不安定などです。

[診断]  セロファンテープ法で、早朝起床前に肛門周囲に付着させて、顕微鏡で虫卵の有無を調べます。起き上がると卵が落ちてしまうので、寝床でそのまますぐにテープをはらないといけません。検出率は2回の検査で60%、3回で70%と決して高くないです。

[治療]  コンバントリンという駆虫薬を内服します。1回の服用で90%ほどの効果がありますが、本当にぎょう虫がいなくなったかどうかを確認する為に、1〜2週間後にもう1度検査を行います。駆虫薬は成虫には効きますが、卵には効かない為に、繰り返し虫の出ている子には、10〜14日後にもう1度服用してもらいます。

[予防]  指しゃぶりや爪かみの習慣があれば、治すこと。爪切りもまめに。体を清潔に保つ、毎日入浴し、おしりは特にきれいにする。シーツや寝具はまめに洗い、日干ししたりして清潔にする。まめに下着をとりかえる。

  以前は家族内での感染が多かったのですが、今は保育園や幼稚園、学校といった子供たちの集団の中で感染することが多くなりました。検査でぎょう虫がいるという結果がでた時は、とりあえずその子の治療をしますが、繰り返し出ていたり、兄弟でそろって出ているときは、家族全員の検査や治療が必要になります。卵はいろんな場所に付着するでしょうし、床にこぼれた卵が空中に舞って、それをすいこんで感染する可能性もあります。ぎょう虫症なんて、まだあるのか・・とお考えの方もあるかも分かりませんが、感染の機会はまだまだ多いことを肝に銘じて下さい。
 

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