細菌性腸炎(食中毒)

食品に付着増殖した病原菌、またはその生産する毒素を食品とともに摂取しておこります。いわゆる食中毒です。

[原因] 厚労省の食中毒統計に次のような菌が含まれています。
サルモネラ:動物の腸管、自然界(河川、湖川、下水など)に多く存在し、熱に弱い。鶏肉、卵を汚染することが多い。

腸炎ビブリオ:海水で増殖する。真水や酸の中では増殖できない。熱に弱い。魚介類を汚染することが多い。

ブドウ球菌:人や動物の毛・皮膚・鼻腔・咽頭などに常在。毒素を産生し、100℃に加熱しても不活化しない。

腸管出血性大腸菌、病原性大腸菌:動物の腸管内に生存する。常在性大腸菌とは区別できない。糞尿を介して飲料水などに汚染したり、食肉処理過程で生肉を汚染する。加熱や消毒処理には弱いが、少ない菌量でも(100個くらい)発病することがある。毒性の強いベロ毒素を出し、溶血性尿毒症症候群や脳症を合併して(約1%)死にいたる事もある。

カンピロバクター:家畜・家禽類の腸管内に生存する。乾燥に弱く、加熱で死滅する。食肉(特に鶏肉)・鶉卵・臓器・飲料水を汚染する。小児下痢の原因の20%を占める。

ボツリヌス菌:自然界・土壌や家畜の腸管に存在する。空気が遮断されているところを好み、熱には強い。極めて毒性の高い神経毒(ボツリヌス毒)を産生し、致死率は25%。毒素を不活化するためには80℃で20分以上の加熱が必要。

ウェルシュ菌:人や動物の腸管、土壌、下水等に常在する。増殖して毒素を産生する。熱に強く不活化するには100℃で1〜2時間の加熱が必要。100万個以上の菌の増殖で発病する。戦争時はガス壊疽の原因として有名。

セレウス菌:土壌や下水、河川などの自然界に広く生息する。熱に強い。毒素を産生し、100℃で30分加熱しても死滅しない。下痢型と嘔吐型の比較的軽症の食中毒の原因となる。

コレラ菌:土壌や動物の腸管内に存在する。普通は胃液中ですぐ死滅するが、腸管内に進入するとコレラ毒素を産生して下痢を起こす。

赤痢菌:人と猿の霊長類だけに病原性を発揮する。必ず血便を起こすため赤痢と呼ばれる。

エルシニア菌:動物の腸管内や自然界に広く生息。冷蔵庫内の低温環境でも増殖する。糞尿を介して食肉や飲料水・井戸水などを汚染する。

リステリア:動物(家畜・野生動物)、魚類、河川などに広く生息。食肉、チーズ、サラダ、生の魚(刺身)などを汚染する。冷蔵庫などの低温環境でも増殖可能だが、65℃で数分間過熱することにより死滅する。

食中毒が発生するにはかなり多量の菌量がいります。少なくとも10万〜100万個、多くの人が発症するには1000万個以上を要するといわれています。

[症状] 原因菌により、症状の強さに差はありますが、下痢はほぼ必発で、強い腹痛を伴い発熱、嘔気、嘔吐、血便が見られることも多いです。次回に菌による症状の違い等をまとめます。ウイルス性胃腸炎(いわゆるおなかのかぜ)との違いは、便を培養して菌を検出しないと診断は出来ませんが、強い腹痛を訴える時、粘液や粘血の混じる便を見たときは、細菌性腸炎のことが多いようです。人から人へはうつりません。糞便を介して二次感染します。夏場には集団発生することがあります。

[治療] 対症療法。鎮痛剤や下痢止めの使用は必要最低限の使用に留めないといけません。病原体の排泄を遅らせ、かえって回復が遅れます。従って、重い時には絶食して入院治療が必要になります。抗生物質の使用は一般的には必要ありませんが、サルモネラ、カンピロバクター、病原性大腸菌の症状の激しいものについては使用します。
 これからは涼しい季節になりますので、食品が傷んで菌が増殖する、ということは少なくなるかと思います。ただ、お子さんに関して言うと、食料品から病原菌が口に入ることは少なく、汚い手、爪を噛んだり、離乳食を食べている乳児の場合は、いろんなものを口に入れることによって感染しますので注意をして下さい。又、家族の中で1人発病した時は、看護するお母さんが便の処理をした後は、充分手洗いをするようにして下さい。

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