伝染性単核球症

 あまり聞き慣れない病名かと思います。今週はこの患者さんを診ましたのでお話します。

[原因] EBウイルス。ヘルペスウイルスの仲間。他にサイトメガロウイルス、アデノウイルス、トキソプラズマなどの感染でも似た症状をおこすことがあります。飛沫感染、唾液中に分泌され経口的に受け渡しされることもあります。

[症状] 1ヶ月程度の潜伏期間の後に発病します。発熱、咽頭痛、頚部リンパ節腫脹が大部分の例に見られます。扁桃には白苔がつくことがあり、リンパ節腫脹は中には全身で、痛みを伴ったりします。肝臓脾臓が腫れたり、発疹がでる事もあります。検査所見が特徴的で、リンパ球の増加が著明にみられます。その中でも異型リンパ球と呼ばれる大型のリンパ球が増加します。これが伝染性単核球症の名前の由来となっています。時には白血病、悪性リンパ腫などの病気と紛らわしい事もあります。さらに、肝機能障害が見られることも多いです。

[治療] ウイルスなので治療はありません。高熱が続いたりするのでかなりしんどいですが、消炎鎮痛剤などの対症療法のみです。免疫系が異常に亢進されているので、ペニシリン系の抗生物質を投与すると容易に薬剤性の発疹が出ることがあるのでペニシリン系の抗生物質は禁忌です。ほぼ1ヶ月で症状や検査値の異常は改善します。

[特徴] ヘルペスウイルスは突発性発疹やみずぼうそう、ヘルペス歯肉口内炎でお話したように、感染して治癒した後も体の外には出ていきません。大部分(80%)の人は、幼児期に感染を受けますが、軽度の発熱くらいで、あまり病気と認識されないうちに治ることが多いです。その後ウイルスのキャリアーとなり、他のまだ感染を受けていない人への感染源となります。10代の思春期、青年期に初感染を受けた場合にこのような強い症状がでてきます。

 こういった理由からこの病気は比較的大きい子どもの病気ですが、幼児でも時々ありますね。見かけるのは年間2〜3人といったところでしょうか・・・。幼児期にかかると、症状は高熱が続くくらいで分からないことも多いですが、検査した時にリンパ球増多があり異型リンパ球がみられることは多々あります。軽いEBウイルスの感染か、あるいは前述のサイトメガロウイルスによるものなのかな・・・と思っています。これはいちいち説明せずにウイルスの感染があります・・・としか言っていませんが。普通、風邪の熱といっても、まあ実にいろんなものが含まれています。原因が分からないのが大部分なのですが。

 

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