貧血(乳幼児期)

 子供の場合はあまり症状が無く、顔色が悪いということで検査してみると貧血が見つかることが多いです。心臓に奇形があるなど特別な場合を除くと、殆どが鉄が足りないタイプの貧血になります。今回は特に乳幼児期についての鉄欠乏性貧血についてお話します。

[病態] 血液の成分である赤血球や、その中に含まれているヘモグロビンという赤い色素の量が減少した状態が貧血です。ヘモグロビンの主成分が鉄なので、体内の鉄分が不足しておこるのが鉄欠乏性貧血です。赤血球の数は少なくはなりません。

[原因] 人間は生まれてから2、3ヶ月で、胎児期の鉄分の蓄えが無くなり、急激な成長で血液が薄まるので、一番血中ヘモグロビン濃度が少なくなります。母乳や牛乳は赤ちゃんの栄養としては大切ですが、鉄の含有量が少ないので、いつまでもそれだけでは鉄不足になってしまいます。

[症状] ヘモグロビンの値は乳幼児期は11g/dlが正常値の下限です。しかし、9g/dl以上であれば、皮膚や粘膜、手や爪が何となく白っぽいという程度の症状しか現れません。潜在的貧血といえます。自覚症状がなく見過ごされやすいですが、ほっておくと発育に影響してきます。9g/dl未満になると色々な症状がでてきます。体道後の息切れ、イライラする、頭痛、めまい、進行すると心雑音、衰弱感、嘔気、呼吸困難。ここまでくると気づかれないことはないですが、乳幼児はめまいや頭痛など訴えませんので血液検査で判定する必要があります。

[精神運動発達との関係] 
鉄欠乏性貧血(ヘモグロビン10.5g/dl以下)が3ヶ月以上続くと精神的発達、運動発達ともに遅れる。
鉄欠乏性貧血が3ヶ月以上続き、精神運動発達が遅れた例に鉄剤を投与して貧血を改善しても、精神運動発達の遅れは数年間持続する。これが永続的かどうかはまだ不明。
貧血の程度が軽く、持続が短い例は鉄剤投与に反応して精神運動発達遅延は改善する。

[治療] 鉄剤の内服を行います。子供用のシロップがあります。普通1〜2ヶ月で貧血は改善しますが、これだけではすぐなくなってしまいますので、もう1〜2ヶ月服用して、体内に貯蔵させます。最近の調乳は鉄分を補ってあります。フォローアップミルクはとくに不足しがちな鉄分の調整をしているものです。母乳のお子さんは離乳食をすすめて下さい。あまり食べない場合は鉄分の多い食材を気をつけて摂るようにして下さい。あさり、しじみといった貝類、こんぶ、ひじきなどの海藻類、小松菜、ほうれん草などの緑黄色野菜、卵の黄身、レバー、うなぎなどがいいです。

 赤ちゃんの場合は自覚症状がないので、殆ど医者が注意して見ていないといけない問題かと思います。健診や予防接種の診察の際に指摘されることも多いでしょう。乳児が顔色が悪いといわれたなら、血液検査は受けるようにして下さい。また、幼児の場合は牛乳貧血に注意して下さい。牛乳は栄養が多いと考えられていますが、鉄分は少なく、最近は鉄分を添加している乳飲料も増えていますが、他の食品に含まれる鉄の吸収を妨げますので、牛乳の飲みすぎは貧血つながります。気をつけて下さい。

 

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