アセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐症)

 感染性胃腸炎とよく似ているのですが、胃腸炎が原因ではなく、突然激しい嘔吐を繰り返して元気が無い状態になる病気を、アセトン血性嘔吐症といいます。年に数回発作の形でおこるので、周期性嘔吐症ともよばれます。

[病態] 体は燃料である糖分が不足すると、脂肪を分解してエネルギーを補います。脂肪の分解物としてできるのがケトン体と呼ばれるもので、これが血液中に過剰になると血液が酸性になって、だるくなったり、顔面蒼白になり、うとうとしたりという代謝障害の症状が出てきます。6歳ごろをピークとして、2〜10歳の子供に限られ、思春期になると自然に治ります。

[原因] 周期性嘔吐症の原因自体は明らかになっていませんが、患者の年齢からみて、脳や神経の発達が未熟な為ではないかと考えられています。そして過労やストレス、感染などが誘因となることがわかっています。発表会、運動会、遠足、旅行などの日の夜や翌朝に嘔吐発作がおこりやすいようです。一般に周期性嘔吐症を起こす子供は痩せ型が多く、神経質であるなどの報告があります。胃腸炎のあとにぐったりしてしまうのは、原因がはっきりしているので周期性嘔吐症とは又別のものになりますが、ケトンの代謝異常という意味では同じで(ケトン性低血糖症)、エネルギーの元として肝臓に蓄えられる糖分の貯蔵量が少ないタイプの子供さんでは、食事を取らなかったり、炭水化物が不足すると、すぐに異常が現れてしまうのだと思います。非常に鑑別しにくいよく似た状態になりますね。

[症状] 突然、激しい嘔吐を繰り返します。1日のうちでは夜間か起床時に起こる傾向があります。吐く息にリンゴの腐ったようなにおい(アセトン臭)がしたりします。頭痛や食欲不振、腹部の不快感や腹痛を訴える事もあります。発熱や下痢は殆どありません。嘔吐を繰り返すとぐったりとして元気がなくなります。なかにはたった1回の嘔吐でぐったりしてしまう場合もあります。重症になると胆汁や黒い血液のようなものを吐く場合もあります。けいれんを起こすこともあります。最近はあまりみられないようで、特に重症例はめったにないようです。減少した原因ははっきりしませんが、栄養状態がよくなったことや、他の病気との鑑別がはっきりするようになった為ではないかと考えられています。

[治療] 糖分の不足が初期に起こるので飴をなめさせたり、少しずつジュースを飲ませたりします。発作が起こってしまい嘔吐が長引くと点滴が必要になります。これは非常に有効で、点滴をはじめると短時間で本当に元気になります。

 周期性嘔吐症は一度発症すると、たいてい年に数回は症状を繰り返します。最初の発作時は兆候を感じ取れなかったとしても、2度目からは家族が注意していると、嘔吐が起こりそうな気配を察知できることもあります。日常的には、偏食をなくし、規則正しい食事を取るように心がけます。精神的ストレスが誘因になることも多いので、遊びすぎたり、非常に疲れている時には注意して下さい。

 

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