鳥インフルエンザ

 最近は鳥インフルエンザについて大変問題になっていますので、テレビや新聞で見たり読んだりされている方は多いと思います。今週はこのお話をします。

[起源] シベリアやアラスカの湖沼の中にいるウイルスが飲み水を通じて渡り鳥のかもに感染し、越冬のために南方へ飛来した時に糞を介して他の動物に広がっていきます。鶏に感染を繰り返すうちにウイルスが変化して毒性の強いウイルスに変わっていくと考えられています。

[感染様式] 鶏の肉や卵を食べて人が鳥インフルエンザに感染した例は報告されていません。糞の中にウイルスはありますが、卵の中に入ることはなく、殻に糞がついたとしても消毒されるので卵の殻から感染する事もありません。人には鶏と濃密に接触する環境にある場合に(家で鶏を飼っている等)、感染がみられていますが、飛沫感染かどうかなどは分かっていません。そして人から人にうつるということは報告されていません。

[新型ウイルスへの変異] 今一番問題になっているのは、人への偶然の感染を繰り返すうちに人から人へ感染できる遺伝子を持った”新型インフルエンザ”がでてくることです。過去にも10〜40年の周期で新型が誕生しています。これらは、人には感染しないはずの他の動物のウイルスが、豚の体内で人のウイルスと交じり合って誕生したのだと考えられています。20世紀では1918年のスペイン風邪(H1N1)、1957年のアジア風邪(H2N2)、1968年の香港風邪(H3N2)です。今流行しているのはこの香港型(H3N2)と、スペイン風邪の再来の1977年のソ連型(H1N1)ですが、いまや抗体を持っている人が多いので、それほど死亡率は高くはなりません。新型のウイルスが出現すると抗体を持っている人間がいないため、世界的大流行(パンデミック)がおこり、何千万人もの死亡者がでるだろうといわれています。1997年に香港で初めてこの鳥のH5N1型が報告されて以来、1999年にはH9N2型、2002年にはH7N7型、またH7N3型、H1N2型などがみられていますが、最も警戒されているのが、今問題になっているこのH5N1型です。世界保健機構(WHO)などで、今後の感染の広がりに細心の注意が払われています。

[予防と治療] 現行のワクチンはこの新型ウイルスには効きません。今流行しているA香港型と、Aソ連型、B型の3種が含まれているのみですので、新型に対応するワクチンを開発する必要があります。治療に関しては抗インフルエンザウイルス(タミフル、リレンザ)は有効です。パンデミックが起これば薬の不足が大きな問題になるでしょう。

 香港風邪から35年経ち、本当に新型インフルエンザの出現が心配されています。ワクチンの製造能力を維持することや、抗インフルエンザウイルスの備蓄の必要性など、各国でパンデミック対策がとられています。

鳥インフルエンザに関するQ&A → 厚生労働省ホームページ内「◎緊急情報 鳥インフルエンザに関する情報」

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