2009年度 インフルエンザ脳症(10/2/8更新)

国立感染症情報センターが、新型インフルエンザによる脳症のまとめを発表しましたので、転記します。例年よりも多いですが、本当の意味の脳症だけでなく、痙攣や、熱譫妄も含まれているようです。

インフルエンザの定点当たり報告数の推移と、インフルエンザの全ての型による急性脳症の報告数とは、概ね同様の傾向を示しており、大半の教育機関の夏季休暇終了以降に増加傾向が顕著となっています。

2009年第1〜27週の季節性インフルエンザの流行が認められた期間のインフルエンザ脳症の報告数は48例でしたが、2009年第28週以降2010年第3週までの29週間に、37都道府県から、計285例が報告され、感染者に比べて例年よりもはるかに多くなっています。
2009年第28週以降に報告された285例について、インフルエンザウイルスを型別にみると、AH1pdm 240例、A型(亜型不明)38例、B型1例、型別不明6例であり、AH1pdmによるものが84%を占めています。年齢別にみると、90.5%(258例)が15歳未満の症例であり、年齢中央値は7歳(1カ月〜72歳)、最も症例が多かったのは7歳(39例、13.7%)、次いで8歳(33例、11.6%)でした。

過去3年間の脳症の年齢別の発症割合と比較してみると、2007年、2008年、2009年第1〜27週の期間では、年齢群別の発症者割合は0〜4歳で最も高く、以後低くなるという、同様の傾向を示していましたが、新型インフルエンザによる脳症が主体の、2009年第28週以降の期間では、それ以前の期間に比べ、全ての年齢群、特に29歳以下の年齢群で高い発症者割合を示しているだけではなく、5〜9歳の年齢群で最も顕著に発症者割合が高いことが特徴的です。これは感染者数に比例しているようです。例年は0〜4歳の年齢群の罹患が全体の1/4ほどありますが、新型ウイルスのインフルエンザでは、10%程度です。それでも例年よりは5〜9歳の年齢群の脳症発症数が異常に多いです。単純な熱性けいれんではなく、意識障害が遷延する例も非常におおかったようです。

詳しい遺伝子検査によりインフルエンザウイルスA(H1N1)pdm感染が確認された120例の新型インフルエンザA/H1N1による急性脳症の症例についての調査結果、臨床症状、治療、転帰のまとめです。

多くの症例ではインフルエンザ発症後比較的早期に脳症の症状が発現しており、抗インフルエンザウイルス薬やステロイドパルス療法を中心とした治療が行われて81%が軽快しているものの、中には後遺症を残したり死亡に至る症例も認められており、ひきつづき注意深く対応していく必要があります。今後さらに多くの症例についての情報を得ることで、より精度の高い調査になることが期待されます。
インフルエンザは熱性痙攣をおこしやすい病気ですが、今シーズンは当院でも痙攣がはっきりせず、意識障害が目立った例を経験し、脳症は急激に発症するので、少しひやひやしました。インフルエンザによる入院例は平成10年の大流行以来あまり経験がないので、やはり新型ウイルスは重症になる方があるのだ、と再確認した次第です。

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