2009年度 新型インフルエンザ情報 No.17(10/4/5更新)

今週インフルエンザの患者さんはありましたが、もう終息といって良いでしょう。今季のインフルエンザの総括をします。

2010年第12週のインフルエンザの定点当たり報告数は0.23(患者報告数1,082)となり、第4週以降減少が続いています。第9週以降、定点当たり報告数は1.00を下回っている状態が続いています。定点当たり報告数は、都道府県別では沖縄県(1.16)、佐賀県(1.10)、福井県(0.81)、岩手県(0.80)、富山県(0.60)、新潟県(0.58)、岐阜県(0.55)の順となっています。40都道府県では前週よりも減少がみられています。警報レベルを超えている保健所地域は第7週以降0箇所であり、また注意報レベルのみを超えている保健所地域は第9週、第10週と0箇所となった後、第11週に1箇所となっていましたが、第12週に再び0箇所となりました。

京都市内68定点医療機関からの報告によりますと,第12週の定点当たり報告数は0.04でした。 ゼロではまだありません。年齢別の推移も示します。12月の後半からは年長から中学生までの年齢層が激減、その他はあまり変わらないように感じます。

全国の定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数の推計値は約3万人(暫定値)と減少し、第28週以降これまでの累積の推計受診患者数は約2,066万人(95%信頼区間:2,046万人〜2,086万人)(暫定値)と考えられます。性別では男性約1,066万人(51.6%)、女性約1,000万人(48.4%)であり、年齢群別では5〜9歳約520万人(25.3%)、10〜14歳約476万人(23.1%)、15〜19歳約280万人(13.6%)、0〜4歳約229万人(11.1%)、20〜29歳約219万人(10.6%)、30〜39歳約155万人(7.5%)の順です。但し、推計受診患者数は、受診患者数の多い医療機関がより多く選定されている傾向があることなどから、真の受診患者数より過大であると考えられるので、推計受診患者数についてはあくまで参考値です。

厚生労働省が公表している新型インフルエンザによる国内の入院例および死亡例(平成22年3月17日現在入院例17,623例、死亡例198例)と国内の人口(平成20年度人口動態統計、性・年齢別推計人口)および第28週以降の累積の推計受診患者数による分析結果を図5〜8に示します。入院率は、人口1万人当たり1.40であり、年齢群別にみるとこれまでの患者発生数を反映して5〜9歳(人口1万人当たり12.28)が最も高い1峰性のピークを示していますが(図5)、推計受診患者数(暫定値)当たりでみると推計受診患者1,000人当たり0.85となり、年齢群別では15〜19歳と20代が最も低く、幼若年齢層(0〜4歳:推計受診患者1,000人当たり1.91)と高齢者層(60〜69歳:同2.78、70歳以上:同5.21)で高い値を示しています(図6)。死亡率は、人口10万人当たりでは0.16であり、年齢群別では0〜4歳(人口10万人当たり0.32)、5〜9歳(同0.23)、40〜49歳(同0.19)、50〜59歳(同0.18)の順となっており、10代、20代、30代は他の年齢層に比べて低いです(図7)。一方、推計受診患者(暫定値)1万人当たりの致死率は0.10であり、年齢群別では10〜14歳、15〜19歳(推計受診患者1万人当たり0.01)が最も低く、70歳以上(同2.82)、60〜69歳(同1.47)、50〜59歳(同0.66)と高年齢者程高い致死率を示しています(図8)。人口当たりの入院率、死亡率からは、新型インフルエンザ流行のインパクトは9歳以下の幼若年齢層で高いことは明らかですが、実際に新型インフルエンザに罹患した場合の入院率、致死率は高年齢層の方が高くなっています。


患者報告数が増加し始めた2009年第28週以降では、2010年第10週までに、全国の地方衛生研究所から29,145件のインフルエンザウイルスの検出が報告され、AH1亜型(Aソ連型)18件(0.06%)、AH3亜型(A香港型)153件(0.52%)、B型35件(0.12%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)28,939件(99.29%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めています。また、2010年に入っても第1〜10週までの10週間で検出・報告された2,603件中、AH1亜型0件、AH3亜型5件(0.19%)、B型29件(1.11%)、AH1pdm 2,569件(98.69%)と殆どがAH1pdmである状態が継続しており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される状態が続いていますが、AH3亜型がわずかに検出され、ビクトリア系統を中心としたB型インフルエンザウイルスの報告数もやや増加しています。

私の感じたまとめです。
1)
基礎疾患を持つ児童(たとえば喘息など)に重症化率が高いと当初報告されましたが、実際にはそれほどではありませんでした。きちんと管理されている喘息児というよりは、以前に喘息と言われたことがあるとか、今は治療を受けていない子どもでの重症化もありました。
2)
入院したり低酸素症を来した児童は比較的年長児にも多く、今回の新型インフルは上気道感染にとどまらず、下気道感染(気管支炎や肺炎)を比較的きたしやすいことは、今までの季節性とは異なっている点です。脳症患者は例年、0〜4歳の割合が高いですが、新型インフルエンザ流行期には5〜9歳が最も多く、季節性インフルエンザより発症年齢が高いでした。
3)
家族内感染はこれまでの季節型よりは少なく、個別に各集団内で感染するケースが多いでした。
4)
新型が流行して、当初はその後季節型が流行するかと心配されたがその流行はありませんでした。来年度以降も今のところ新型が流行するであろうという話で、季節型インフルA型は流行しないと思われます。
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