-

生活習慣病について(京都医報より) 

● 診療の萎縮について

   『検査と治療の萎縮は医療機関が抱える大きな問題』(山内 知)

●様々な検査を実施していた診療からの萎縮傾向
最近少し気になる「診療の萎縮」についてお話しします。20年くらい前は、一度の採血で多数の項目を検査しても、保険診療として認められていましたし、多項目を検査したからといって診療機関が赤字になることはありませんでした。検査漬けの医療費無駄使いと批判された所以ですが、その時代は初診の患者さんなら、現在もなされているような一般的な検査項目以外に、リウマチの検査、甲状腺機能、いろんな腫瘍マーカー、各種肝炎ウイルス、電解質、梅毒の検査などいろんな検査をして、何か網にかからないかという、いわば邪道ともいうべきことが行われていました。まず、様々な検査をして結果が出てから考えるという医師が多かったと思います。そのような時代にあっても、医療費抑制と医療の本来の姿を考えて、必要と思われる検査のみをするように指導していた大学医局もあったそうですが、大多数の診療機関はこのような、網を広げて何かが引っかからないかという考え方でした。患者さんの側にもまた、医療機関に診療報酬を支払う保険者側にも有り余るお金があれば、この方式は決して間違いとは思いませんが、最近のように患者さんの負担率が上昇し、また保険者も赤字となってきた現在では以前のようにはいきません。このごろは多数の項目を一度の採血で検査すると、診療機関に赤字が出る仕組みになっています。また、患者さんの負担率の上昇に伴って、窓口での支払額が多額になるために、診療サイドも出来るだけ少ない項目に押さえようとします。その結果網の目が広がり、逃げていく魚が出てくる可能性も考えられます。これは言い換えれば「検査における診療の萎縮」ともとれる事柄であります。
●薬漬けと呼ばれていた薬の処方に対しての是正
また、薬の処方でも同じようなことがあります。数の計算方法は複雑なのですが、多数の薬を投薬すると、院内処方の場合は診療機関の赤字となる仕組みになっています。また、院外処方では赤字にはなりませんが処方箋料が減額されます。前述の検査漬けに対して、こちらは薬漬けと呼ばれていた医療に対して、これを是正しようとする試みです。薬価差益と呼ばれておりますが、昔は薬を出せば出すほど収入が増加する仕組みになっていました。そのために一部において必要以上の投薬がなされていた事は否定しません。しかしながら、最近ではこの薬価差益はほとんどなく、院内処方の診療機関では在庫薬品との関係で、むしろ薬品部門は赤字状態のところが多いと思います。ところが一方で、本当に多数の薬剤が必要な患者さんもおられるわけです。比較的重症の糖尿病に高脂血症と高血圧を合併し、心筋梗塞や脳梗塞の既往などがあれば、相当多種類の投薬を余儀なくされることもあります。院内処方の医療機関はこのようなときに困るわけですが、こういう患者さんだけを院外処方にしている医療機関もあります。また、月に2回以上受診してもらって、1回目の受診時と2回目の受診時に異なった薬を、おのおの1ヶ月分投薬するという方法をとっている医療機関もあります。あるいは、必要最低限に投薬をおさえている医療機関もあるでしょう。これすなわち「治療における診療の萎縮」であります。

●収支の考えのない医療行為はもはや存在しない
 アメリカの年間総医療費は約150兆円に対し、日本の総医療費は約30兆円。人口はアメリカが日本の約2倍ということを考慮しても、日本の医療費はそんなに高額とは思いませんが、現在の医療費抑制策によって、このような「診療の萎縮」を招来する可能性を秘めております。本来医療とは、その患者さんにとって必要なことを、全力で手助けするのがその本質ではありますが、国公立の医療機関でさえその経営状態を問われている今日においては、収支の考え方なしでの医療行為は、もはや存在し得なくなっております。
●患者さんの立場に立った医療とのギャップ
 それでは、患者さんのサイドからはこの問題に対してどうしたらよいかと尋ねられれば、実は返答に窮します。検査に関しては、「支払額が少し高額になっても構いませんから、必要な検査はして下さい」と告げられるのも一つの方法かと思います。投薬に関しては、「どうしても多数の薬剤が必要なら院外処方箋を出して下さい」と伝えられる方法もあるかと思います。その他にもいろいろな手段はあるかと思いますが、現在の医療機関は上述のような問題を抱えていることを理解していただいた上で、主治医と話し合われることが大切かと思います。

生活習慣病については下記をご覧下さい。
・生活習慣病について(京都医報より)
copyright(c) 2003 Yamauchi Clinic. all right reseaved.