生活習慣病について(京都医報より) 
●上手な医者のかかり方

    『診察の際に、できる限りのことを医師に伝えて下さい』(山内 知)
●C型、B型肝炎やエイズが目的の検査は必ず伝えて下さい
まずは医療機関を受診されるときにご注意いただきたいことをいくつかお話しいたします。当然、受診された理由があるわけですし、それは診てもらう先生にお話しされるでしょうが、C型肝炎やB型肝炎、そしてエイズなどの検査を目的に来院されたときは、必ずそのことを医師に伝えて下さい(ただし、法的には健康診断目的は保険診療の対象外です)。手術前の検査や、胃カメラ等の観血的操作が予想される検査においては、これらの検査は保険診療上傷病名なしで認められておりますので、このような検査をされる前の血液検査では普通C型ならびにB型肝炎の検査とエイズの検査は実施しますが、一般的な採血では実施しないこともあります。あまり血液検査を受けられないような人は特にC型肝炎に関しては、一度検査して陰性かどうか確かめておかれた方が良いかと思います。また、現在C型肝炎に罹っておられる患者さんに関しましては、保険診療上、インターフェロンの長期投与が2002年の2月から認められるようになりましたので、最近C型肝炎の治療方針が変わっています。
●献血者に占めるエイズ陽性は日本が最も高い率
以前インターフェロンの適応外と言われた患者さんでも、もう一度受診して治療方法を相談された方が良いと思います。また、エイズも若い世代を中心に、特に東京近郊や大阪など大都会で増加しております。この頃ではエイズの治療方法も進歩してきていますので、もちろん予防が第一ですが、早期発見早期治療も大切です。日赤の献血ではこれらの検査は実施して、患者さんにその結果を通知しておりますが、先進諸国の中で献血者に占めるエイズ検査陽性の比率は日本が最も高い率となっています。実数はそんなに多くはないのに、比率としては高い値となっているのは、検査目的で献血をしている数が多いからだと思われます。保健所でも検査は実施されています。

●他の病院や診療所での治療も事実を伝えて下さい
 その他に必ず医師に伝えていただきたいことがいくつかあります。
 まず、現在ほかの病院や診療所などで治療を受けておられる方は、その病名と治療内容を知らせて欲しいのです。内服薬があるならその内容を、注射を定期的にしているならその事実を教えて欲しいのです。以前のようにビタミン注射を受けている人は少なくなってきていますから、定期的に静脈注射をしている患者さんといえば、B型肝炎とC型肝炎が多いかと思います。これらの病気に使用する静脈注射は大部分がノイファーゲン製剤といいまして若干血圧を上昇させる傾向がありますから、我々は定期的に静脈注射を受けていると聞かされれば、血圧に要注意と考えるわけです。投薬されている内服薬に関しては、その名前を記載された紙をお持ちなら、必ず持参して医師に見せて下さい。薬剤の内容を書いたデータをお持ちでないなら、薬そのものを持参して見せていただいても結構です。現在治療を受けている病気と、その治療内容を知ることはその患者さんを診る上で大変参考になりますし、逆に知らせていただかなかった時は、危険なことも起こりかねません。また、生活習慣病の1つである糖尿病に罹っておられる患者さんでは、糖尿病性網膜症は早期発見早期治療で失明を防げますので、当然眼科も併せて受診しておられることと思いますが、眼科を受診されるときに、最近の血糖値やHbA1Cの数値も眼科医に知らせて下さい。ちなみに成人の失明を来す最大の原因は糖尿病性網膜症です。
●過去の治療でアレルギーが出た方も必ず伝えて下さい
 つぎに、今までに受けた治療で何らかのアレルギー症状がでたことのある人は、必ず伝えて下さい。例えばある薬を飲むと蕁麻疹がでるとか、検査の時に造影剤の注射をしたら苦しくなったとか、あるいは、アレルギーではありませんが、風邪薬を飲むと眠気が非常に強く出るといったことも、個人差が強いために参考になります。例えば、高血圧で長期にわたって降圧剤を投与されている患者さんが、あるAという抗生物質にアレルギーがあったとしましょう。最初に診察を受けたときに医師にその旨を伝えていても、こちらも聞いていながら、うっかり忘れて投与することもあり得ますので、こういう患者さんは「抗生物質を出します」といわれたら必ず、Aという薬にはアレルギーがある旨を、しつこいと言われようとも再度言って下さい。

●虫垂炎や帝王切開でも、手術や入院をした場合は全て伝えて下さい
 続いて、伝えて欲しいのは、いままでに罹った病気です。手術した病気や入院を必要とした病気は全て教えて下さい。それと大切なのは輸血を受けられたかどうかです。輸血を受けた方は必ず言って下さい。また、大きな手術を受けられた患者さんは、血液製剤を投与されている可能性も考えられますのでその旨を伝えて下さい。虫垂炎の手術や帝王切開は手術と思っていない人が多いようで、「手術は何もありません」と答えられた患者さんに「盲腸炎の手術は」、「出産は正常分娩でしたか」と尋ねてはじめて答えてくれる人が多いようです。出産時に巨大児を出産しますと、将来母親が糖尿病になる可能性もありますので、出生児の体重があまりに重い子供を出産されたお母さんも、その旨を伝えておいて下さい。また、全然関係のないと思われる病気も一応言って下さい。1例をあげますとアトピー性皮膚炎の患者さんで目が見えにくくなったといえば、我々はまず網膜剥離を疑います。
●家族の方の病気、病気に遺伝子の関与する可能性は高い
 次に血縁関係のある家族の方の病気です。若くして死亡した人が多いと聞けば、家族性高脂血症を疑います。糖尿病、高血圧、高脂血症等の生活習慣病は遺伝素因も大きな因子です。癌などの悪性腫瘍も注意すべき疾患といえます。最近EBM(evidence based medicine)といって多数の症例に対して行った治療の中で、最も適した治療方法を推奨するという治療方法が主流を占めていますが、今後遺伝子解析が進めば、EBMからtailor-made medicineすなわち、個々の症例に最適な治療へ移行することも予想されます。簡単に言えば、80%の人にはこの降圧剤を勧めますが、あなたにはこちらの方がいいかもしれません。といったことも遺伝子解析が進めば可能になる状況が、そう遠くない時期に到来しそうです。いまは、まだそこまでは進んでいませんが、各種の病気に遺伝子の関与する可能性は高いので、血縁関係の人の病歴は参考になります。将来遺伝子の研究が進めば、それぞれの患者さんの血液をとって調べて、傷ついた遺伝子を探し出し、それを修復するか、あるいは予想される癌などの、ワクチンを接種して発症を予防するといった治療も、夢ではなさそうです。少し脱線しますが、そうなりますと人間の寿命は120歳と言われておりますので、社会全体に及ぼす影響は相当なものと予想されます。

●自宅の循環風呂、温泉後の高熱、海外旅行も疑いはある
 その他のことでは、自宅で循環風呂の施設を使用されている方は、レジオネラ菌による感染症を考慮しなくてはなりませんので、これも医師に伝えて下さい。温泉に行ったあとで高熱が出てもやはりレジオネラを考えます。
 また、最近海外旅行へ行かれた方は行き先を伝えて下さい。旅行先で流行している病気は、インターネットで国立感染症情報センターにつなげばすぐに判る時代です。特にマラリアは医師も経験不足ですが、検査技師も経験不足ですので、血液標本を顕微鏡で見るときに見落とすことがあるそうです。したがって血液を、一般の診療所のように院外の検査施設へ検査依頼するときには、検査用紙にマラリアの疑いもある旨を記載して、見逃されることのないように注意するように私どもは教えられておりますので、マラリア流行地からの帰国のときには必ず医師に伝えて下さい。
(山内 知)

copyright(c) 2003 Yamauchi Clinic. all right reseaved.